第四幕、御三家の幕引
 そう答える松隆くんの隣で、鶴羽くんがじろりと鹿島くんを睨んだ。その両腕は松隆くんと月影くんに縛られてしまい、背後で窮屈そうにしている。何が起こったのか、よく分かっていないのは鶴羽も同じらしい。当然だ、御三家の登場は──ぎりぎりなのに──あまりに余裕過ぎる。


「もちろん、もともとはそんなつもりじゃなかったよ。桜坂も鹿島と別れて安心したことだし、鹿島を脅して鶴羽の計画を吐かせようかなと思ってたくらいだったんだけど」

「そんな話してたのか……お前本当に怖いな……」

「でも何もしなかっただろ?」

「結果論だろ。もしあのタイミングで樹からのLIMEがなかったら脅された挙げ句、脅され損になってたな……」


 はあー、と鹿島くんは深く息を吐きだした。


「大体、お前らの間が悪いんだよ……今日に限って呼び留めやがって。お陰でこんな土壇場になったんだ……」

「どういう……?」


 二人だけで話をされても、何が起こったのかさっぱりだ。


「ほら、桜坂は、遼に『鹿島に会いに行く』って伝えただろ、俺が職員室に行ってて教室にいなかったから。職員室から帰った後に遼からそれを聞いたんだけど、鹿島は俺と同じく職員室にいた。しかも、俺が帰るときはまだ用事の済む気配がなかった……ということは、桜坂は戻って来るはずなのに戻ってこない。忠犬よろしく鹿島を待ってる可能性もあったけど……」

「この間、総に言われたとおり、十分かそこらで戻るって言ってたからな。鹿島がいないなら戻ってくるのが自然だった」


 やれやれ、と桐椰くんはあぐらをかきながら膝の上に頬杖をついた。不機嫌そうな表情は、今日もお前に振り回された、と言いたげだ。


「とはいえ、鹿島が生徒会室にいるんじゃないなら呼び出す手間が省けるし、桜坂がいないうちに鹿島のことを脅そうかって話してたんだけど」

「勘弁してくれ。樹のことなら知らないって言ってるのに、全く耳を貸さないんだから……」


 鹿島くんは鹿島くんで、松隆くんと桐椰くんに酷い目に遭わされたと言わんばかりだ。ただ「だからさっきから言ってるとおり、結果的に何もしなかったでしょ、俺達」「結果的にな?」と話しているので、脅されはしなかったらしい。


「大体、君らがあそこで俺を呼び留めなければ、俺は生徒会室に行って、そこで樹を止めて話は終わってたんだよ。それを……」

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