第四幕、御三家の幕引
「面会とかあるんじゃないの?」

「樹も俺に会いたいわけはないだろ」

「そうかな? 一応、幼馴染じゃん」

「一応な。夏苗(かなえ)は行ってるのかもしれないけど」


 一瞬、誰のことか分からなかったけど、すぐに八橋さんのことだと分かった。そういえば、鹿島くんが自分から八橋さんの話をするのは初めてだった。


「八橋さんは今でも鶴羽くんと仲良いの?」

「いや、もう長い間会ってもなかったんじゃないか。俺だって夏苗とは家の付き合いくらいでしか話してない」

「八橋さん、可哀想……」

「前にも言ったけど、夏苗は俺のことを好きなわけじゃない。俺にとっても、妹みたいなもんだしな」


 きょとんとしてみせると「なんだ」と眉を(ひそ)められた。


「いやあ……。鹿島くんがそんな風に思う相手がいたとは。っていうか、最近になってようやく鹿島くんの本音を聞けるようになったので感動してました」

「くだらない。聞いて意味がないことに感動なんかするな」

「鶴羽くん、どうなるんだろうね」

「さあ。少年院か保護観察だろうな」

「うん?」

「警察に逮捕された後、検察庁に送られて、その後に家庭裁判所で審判を受けるんだよ。警察にどこまで把握されてるのかは知らないけど、樹のことだ、掘れば掘るほど悪事は出てくる。そう考えると少年院に行くような気もするけど、もしかしたら保護観察って形で出てくるかもしれない」


 よく分からないけど、鹿島くんが妙に詳しいことは分かる。きっとわざわざ調べたのだろう。口先では我関せずって感じなのに、なんだかんだ気になってはいるんだな。


「……さすがに、もう君に手を出したりはしないだろ」

「……そうだね」


 再び沈黙が落ちた。やっぱり、私達は彼氏と彼女なんてやってられない。


「なーんか、忙しい一年間だったなあ」

「こっちの台詞だ」

「……聞きたかったんだけど、鹿島くん、最初は本当に私と御三家のこと嫌いだったよね?」

「嫌い……とまでいうのかは知らないけれど、少なくとも鬱陶しかった」

「……どういうこと」

「……あんまりにも仲良くじゃれてるから、目障(めざわ)りだったって話だよ」


 コン、と鹿島くんはペンを置いた。私があんまりにも話しかけるから、仕事をしている場合ではなくなったらしい。


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