第四幕、御三家の幕引
「言っただろ。最初は樹が正しいのかもしれないとも思ってた。そういう時に、あんまりにも無邪気で危機感のない君の様子を見ていると、こう、(かん)(さわ)るというか、鬱陶しいというか」

「本人を目の前によくそこまで言えますね?」

「聞いたのは君だろ」

(かん)に障っただけで首を絞められちゃ堪らないんだけどなあ」

「そういえばそんなこともあったな」

「あれ結構本気で怖かったんですけど?」


 大した話じゃないような顔をされたかと思えば「確かに、さすがに悪かったかもしれないな」なんて急に謝られて面食らってしまった。今まで悪びれた素振りすら見せなかったのに、急に何の心境の変化だ。


「え……っと」

「怖かったというから謝ったのに、なんだその態度」

「だって今まで謝らなかったじゃん!」

「樹には黒幕のふりをしてほしいと頼まれてたから、謝らずにいれば君は誤解するだろうし、丁度いいかと思って。苛立ちに任せた行動だったから結果論だが」

「人の首を絞めておきながら丁度いいとか言わないでください」


 鹿島くんにそんなことをされたのは球技大会のとき。桐椰くんが透冶くんのことで泣いていた日──鹿島くんが、自分の欲しかった言葉に気付いたのは、それよりも後。つまり、あの時はまだ鶴羽くんに協力していた頃だった、ということだ。

 とはいえ、本当に私をなんだと思ってるんだ。……そうか、どうでもいいのか。


「あの日、なんであんなに怒った……っていうか、イライラしてたの?」

「松隆に負けた後だったし」

「そういえばリーダーが雪辱(せつじょく)をはらしていましたね」

「松隆の席には月影と君が揃って応援に来ているし」

「ツッキーに怒られたなあ、桐椰くんの気持ちを(もてあそ)ぶなって」

「そういう、仲が良い幼馴染っていうのはね……代えがたいものだよ」


 皆まで言われずとも、言いたいことは分かった。要は、御三家の仲の良さが(うと)ましかったんだ。

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