第四幕、御三家の幕引
 御三家は、透冶くんを亡くした後、一時期は仲違(なかたが)いしてたみたいだけど、結局あの通り仲良くやっている。対して、鹿島くんと鶴羽くん、八橋さんは完全に関係を絶っているような有様だった。鶴羽くんは海咲さんを好きだった、八橋さんは海咲さんの妹、と考えると、鹿島くんがあの二人に泣き言を零すこともできなかっただろうし、これからもしないだろう。

 喪った者同士なのに、あまりにも、その孤独は違う。


「……じゃあ更に聞きますけど、鹿島くんが鶴羽くんを止めたかった理由は? なんで?」

「……話したとおり、俺には復讐なんて必要ないんだって気付いたからっていうのが一つの理由。ただ……最初から全面的には協力しきれなかった理由は、樹がいつも“復讐だ”って言ってたからかな」


 そういえば、鳥澤くんも、鶴羽くんは「復讐だ」って話してたって言ってたな……。でも鹿島くんがその単語を口にしたことはない。確かに、その違いには頭を悩まされた。


「復讐っていうのは、“誰かのため”って大義名分が立ってるだろ。ほら、私刑って俗語と同じさ。倫理上、人を殺すのは悪いことだけれど、それを悪いと断定できなくなってしまう、そんな理由だろ、復讐っていうのは」


 ……つまり、どういうことだ。首を傾げると、鹿島くんはもう一度口を開く。


「最初に樹が復讐だのなんだの言ったときは、確かに君達のせいなのかもしれないと、少し思った。でも、樹が何度も口にするのを聞いているうちに、釈然としなくなってね。……“復讐”っていうのは、ただ自分で自分の感情をコントロールできないだけなのに、“誰か”にかこつけて負の感情を発散してるだけ……復讐の理由である“誰か”を使って、言い訳をしているだけなのかもしれないって」


 頬杖をつき、鹿島くんは少し疲れたような溜息を吐いた。


「だから、樹は、納得できない理由を君達に押し付けて、しかも、不合理そうな部分は海咲に責任を押し付けているように、俺には聞こえた。その違和感に気付いたときに、樹を止めるべきだと思った。海咲の死を、そんな独善的な理由に使ってほしくなかったからな」


< 417 / 463 >

この作品をシェア

pagetop