第四幕、御三家の幕引
ふーちゃんは少し考え込む ような素振りを見せた後「確かー、夏苗のすぐ下に弟がいて、その子が後継ぐんだったかなー」とお家事情まで話してくれた。
「あたしもそーだけど、女の子だとお家継ぐように言われないから気が楽だよねー。あ、楽なのはあたしだけなのかなー、許嫁もいないし……」
「あー、そっか、お嬢様お坊ちゃまだとそういうのがまだあるんだ」
松隆くんもさらりと口にするくらいだしなぁ……。そう考えていてふと気づいたけれど、鹿島くんにはそういう人はいないのだろうか。ふーちゃんが知ってるわけがないので、そんなことを考えても仕方がないけれど。
「でも許嫁いたらよかったなぁ」
「……それは許嫁以外を好きになって三角関係になって別の誰かと駆け落ちできるからとかそういう」
「えー、もし亜季に許嫁がいればそういう妄想するけど、あたしはそんなのやだよー。何も考えない恋愛も気楽だなって思っただけだよー」
私で妄想はするくせに自分は嫌だと……! と一瞬憤慨してしまったけれど、気楽な恋愛というワードを聞くと何も言えなかった。ふーちゃんは、それこそありがちな少女漫画のごとく、好きな人との恋をどうにも実らせることができない関係に陥ってしまっていたから。
「ま、あたしのことはどーでもいんだけどさ。亜季と桐椰くんが進展するの、楽しみだなー」
「……何も進展しないと思うけどな」
本当は「進展も何もない」と言うべきところだったけれど、ふーちゃんには見透かされているので意味がなかった。
それどころか、お風呂の帰りにエレベーターを待っていると「あたしは修学旅行で亜季と桐椰くんのイベントに賭けてるから!」なんて言い始める始末だ。
「賭けてるって、それ、自分に何かイベント発生してほしい人の台詞だよ」
「あたしは他人のイベントで楽しめるもん」
「あとそもそも私には何のイベントも発生しないから……」
「えー、御三家と一緒に回る時点でそれは無理だよ?」
「……まさかそのために最初に桐椰くんに道を……」
「うふ」
企みを告白するがごとく、満面の笑みを浮かべたふーちゃんの背後で、エレベーターの扉が開く。なんとその中には、まるでふーちゃんの願望を汲んだかのように御三家揃い踏み。
思わず硬直した私とは裏腹に、ふーちゃんは目を輝かせた。
「あたしもそーだけど、女の子だとお家継ぐように言われないから気が楽だよねー。あ、楽なのはあたしだけなのかなー、許嫁もいないし……」
「あー、そっか、お嬢様お坊ちゃまだとそういうのがまだあるんだ」
松隆くんもさらりと口にするくらいだしなぁ……。そう考えていてふと気づいたけれど、鹿島くんにはそういう人はいないのだろうか。ふーちゃんが知ってるわけがないので、そんなことを考えても仕方がないけれど。
「でも許嫁いたらよかったなぁ」
「……それは許嫁以外を好きになって三角関係になって別の誰かと駆け落ちできるからとかそういう」
「えー、もし亜季に許嫁がいればそういう妄想するけど、あたしはそんなのやだよー。何も考えない恋愛も気楽だなって思っただけだよー」
私で妄想はするくせに自分は嫌だと……! と一瞬憤慨してしまったけれど、気楽な恋愛というワードを聞くと何も言えなかった。ふーちゃんは、それこそありがちな少女漫画のごとく、好きな人との恋をどうにも実らせることができない関係に陥ってしまっていたから。
「ま、あたしのことはどーでもいんだけどさ。亜季と桐椰くんが進展するの、楽しみだなー」
「……何も進展しないと思うけどな」
本当は「進展も何もない」と言うべきところだったけれど、ふーちゃんには見透かされているので意味がなかった。
それどころか、お風呂の帰りにエレベーターを待っていると「あたしは修学旅行で亜季と桐椰くんのイベントに賭けてるから!」なんて言い始める始末だ。
「賭けてるって、それ、自分に何かイベント発生してほしい人の台詞だよ」
「あたしは他人のイベントで楽しめるもん」
「あとそもそも私には何のイベントも発生しないから……」
「えー、御三家と一緒に回る時点でそれは無理だよ?」
「……まさかそのために最初に桐椰くんに道を……」
「うふ」
企みを告白するがごとく、満面の笑みを浮かべたふーちゃんの背後で、エレベーターの扉が開く。なんとその中には、まるでふーちゃんの願望を汲んだかのように御三家揃い踏み。
思わず硬直した私とは裏腹に、ふーちゃんは目を輝かせた。