第四幕、御三家の幕引
 挙句、それを鹿島くんに言われる日がくるとは思ってもみなくて、そのまま閉口してしまった。


「松隆が、そんなことをした君に、一度でも感謝したことがあったか? 月影に、怒られたことはなかったか? 桐椰が、君と俺が付き合うと知ったときに示したのは、ただの嫉妬だけじゃなかっただろ?」


 どれもこれも、鹿島くんは知るはずのないことだ。実際、知らないと思う。

 知らないのに、半ば確信して私を詰問(きつもん)できるのが、答えだった。

 鹿島くんは、少し俯いて、一度私から視線を外した。そのまま腕を組んで、ゆっくりと瞬きをする。


「……こんな風に言われなくたって、君にはもう、分かってただろう?」


 ここまで言わせておきながら、最後まで言わなくたって、分からないとは言わせない──そう言外に伝えられている気がした。

 私は何も言えずに、頭だけ下げて生徒会室を出た。

 第六西へ行くと、御三家はのんびりとお茶を飲んでいた。松隆くんなんて、私が入ってきたのに対して「おかえり」なんて呑気に声をかける。


「今日はみんな予備校は?」

「終業式の日くらい勉強は休んでもいいかなって」

「お前は何かと理由をつけてさぼっているように見えるが?」

「気のせいだよ」


 桐椰くんは立ち上がり「紅茶、ちょっと苦くなってるけど飲むか?」と相変わらず甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。


「飲むー」

「ん。牛乳いれてくれると助かる、使い切りたいから」

「あー、明日から学校来ないもんね」


 ということは、来月まで御三家には会えないのか……。たまの休みの日は呼び出してくれてもいいんだけどな、とソファで足をぷらぷらさせながら松隆くんをチラ見すると、松隆くんが私を見ていた。


「どうかした?」

「いや。痕が残りそうになくてよかったね」

「あ、これねー。さっき鹿島くんとも話してたんだけど、意外と浅かったみたい」

「鹿島、まだ生徒会室にいんの?」

「年度末だから仕事するって言ってたよ。副会長さんはいいんですか?」

「俺がやる分は昨日終わらせたから。てか多分、俺らがやった後のを鹿島が見てるんじゃね」

「あー、なるほど」


 紅茶と一緒にクッキーまで出てきた。相変わらず居心地のいい場所だな、第六西。


「そういえば、結局半田先輩にリンチされないまま終わったね」

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