第四幕、御三家の幕引
「それでも情報の出しようはあるだろう。一切を語らないというのはそういうことだ」

「とりあえずその話はおいといて」


 脱線したまま話が長くなりそうだと判断したのか、松隆くんは標的を私に戻した。


「本当だってことでいいんだよね?」

「……本当ですネ」

「なんで黙ってたの?」

「……だって、ほら、あんまり評判良くないし……私も色々悪いことやって後悔してるし、言いたくないなって……」

「鶴羽の狙いが分からないねってぼやいてたときには教えてくれてもよかったんじゃない? そのほうが話もスムーズに進んだし」

「そうだけどそれでも言いたくないじゃん!」

「別に俺達は幕張のこと恨んじゃいねーのにな」

「だからそれはついこの間まで知らなかったんだから仕方ないじゃん!」

「というか、本当に桜坂って気遣いが空回ってるよね」

「なんでそんなこというの!」


 ひどい、と顔を手で覆ってみせたけれど、そんな演技に騙される三人ではない。「まあ変なタイミングで分かったけど、別にいいか」「どうやって男装してたのかはちょっと気になるけど」と私の事は無視だ。


「ま、俺達と幕張の間に確執があったとかいうなら別だけど、そういうわけでもなかったことだし、一件落着ってとこかな。もう隠し事はないよね?」

「あ、そういえば私、彼方とは昔から友達だよー」

「は?」

「桐椰くんが弟って聞いて驚いちゃった。本当に顔似てないよね」

「は? いやちょっと待……いや、そっか、お前が幕張なら有り得るのか……」


 松隆くんは「別にその隠し事はどうでもいいよ」と一蹴した。桐椰くんは一人狼狽(ろうばい)して考え込み「ギリギリ学年被るもんな……」「なんでアイツ教えねーんだ……」とぶつくさ呟いている。


「じゃ、ま、帰ろうか。せっかく春休みに入ったのに、いつまでも学校にいる理由はないしね」

「松隆くんが第六西に来いっていったんじゃん」

「鹿島に会いにいくとか言うからでしょ」


 第六校舎を出ると、中庭には柔らかい日差しが差し込んでいた。グラウンドや体育館からは、部活動の声が聞こえてくる。昼間からそんな音を聞くなんて、春休みらしい午後だった。


「そういえば、来年は駿哉以外クラス一緒だよね」

「え、そうなの。……そっか、文理で成績別か!」

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