第四幕、御三家の幕引
 さっきまでの少しばかりしんみりした気持ちはどこへやら、色々と合点がいって、ひとりで「あー、そっかそっか」と何度も頷いてしまった。倒れている男の子 (今思えば桐椰くん)とは直接話さなかったし、もう一人の男の子 (今思えば松隆くん)は私に「ありがと」と一言告げただけで、すぐに桐椰くんのところへ行ってしまったので、あれが桐椰くんと松隆くんだったなんて思いもしなかった。しかも、後からやってきた彼方のせいで、てっきり彼方の子分二人だったんだなんて思い込んでしまっていた。松隆くんに幕張に会ったことがあるだの助けてもらったことがあるだの言われても、さっぱり心当たりがなかったのは、そういうことだったんだ。


「なーんだあ、そっかあ」

「……なに一人で納得してんだよ」

「だって、納得したんだもん。あれ以来ねー、彼方がすごく構ってくるようになったんだけど、お陰で雅が怒っちゃって。私も、彼方には言いたくないけど、やっぱり懐いちゃったし。そういえば、修学旅行も最終日は彼方に会ってたんだー。あ、彼方がいるなら大学は関西方面がいいかな。きっとたまに遊んでくれるよね」


 ね、と桐椰くんに顔を向けると、不機嫌そうな顔をしていた。しまった。保護者の浮気をしてしまった。でも、ついつい懐いてしまうあの空気感はきっと桐椰家の特性なので仕方がない。


「……桐椰くんにも懐いてるよ?」

「んなこと言ってねーだろ!」


 と言いつつも、桐椰くんは多分内心もやもやしている。顔に出ている。


「でもびっくりだね。私達、そんな前に会ってたとか。あ、でも桐椰くんとは顔も合わせてないから会ってたことにならないのかな?」

「……まあ、ノーカンみたいなもんだろうな」

「だよねぇ。そういえば、桐椰くんが私に会いたいらしいって彼方から聞いたことあったんだけど、それってそのこと?」


 BCCの最中に聞いた話だ。てっきり、彼方は桐椰くんの初恋を私だと勘違いしていて、そのことを話しているのだと思っていたけれど、幕張匠に助けられた云々の話を聞くと、その件かな、なんて気がしてくる。

 実際、「あー……」と桐椰くんはバツの悪そうな声を出した。


「まあ……兄貴がどういう感じで言ってたのかは知らねーけど、多分それだな……」

「なんで? お礼言ってくれる予定だったの? 気絶してて言えてないから?」

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