第四幕、御三家の幕引
終、
 スマホの画面を見ると、随分と懐かしい人から電話がかかってきていて、思わず笑みが零れてしまった。「もしもし」と出た自分の声にも、笑顔が(にじ)んでしまったのが分かる。


「《久しぶりね》」

「お久しぶりです。よしりんさんから連絡なんて、珍しいですね」

「《アンタ社会人でしょ。ちゃーんと綺麗なカッコしてるか、気になったのよ》」

「うっ……よしりんさんのお眼鏡に(かな)うかはわかりませんが、まあ、それなりに……」


 写真を送れと言われたらどうしよう、手厳しい意見が返ってくる気しかしない……。だらだらと冷や汗が背中を滑り落ちていたのに「《まあ、いいのよ、そんなことは》」と予想外の続きに目を丸くした。


「そんなことって」

「《アタシがそんなことのためにわざわざ電話すると思ってんの?》」


 アンタと違って忙しいのよこっちは、と少しばかりイライラした声に怒られた。

 じゃあ一体何の用事なんですか──そう口を開こうとして。


「《あれから六年経ったわよ》」


 その問いかけに、口を噤んだ。


「《……ねぇ、もう一度聞いていいかしら》」


 電話越しに気配だけでそれを感じ取って、よしりんさんが、ゆっくりと続きを口にする。


「《死にたい?》」
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