第四幕、御三家の幕引
「ないから作るんだよ?」


 何を言ってるのかな?とでも言いたげな顔で首を傾げられた。そっちが何を言ってるのかな?

「冗談はさておき、鹿島くんの目がないのは修学旅行中だけだもんねー。鹿島くんの目があるせいで桐椰くんに言えないこととかあるなら、今のうちに夜這いしとくのがいいとは思うよー」


 かと思えば、唐突に真面目な話をねじ込んでくる。どうやら私と鹿島くんが両想いで付き合っているわけではないと確信されたらしい。なんなら鹿島くんの監視の目があることまでお見通しときた。お陰で“夜這い”にツッコミを入れる気はなくなった。


「……そうだね」

「歩きにくい室内履きで行って転んで抱き着くのがいいと思うんだよね」

「私が頷いたのはそこじゃないです」


 ただ……、部屋に戻りながら溜息を吐いた。桐椰くんに話すことなんて、何もないんだ。
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