第四幕、御三家の幕引
(三)不穏な不意の誤認
初日の懸念とは裏腹に、京都と伊勢神宮の観光は平和だった。相変わらず桐椰くんと松隆くんがカップルみたいにじゃれ合い、ふーちゃんがそれを写真に収め、月影くんが御朱印帳片手に境内を歩き回るだけの二日間だった。
お陰で旅程は順調。三日目のUSJも、とりあえず午前中のところは何の問題も起こらなかった。せいぜい問題があるとすれば天気が悪くて極寒だということだけだ。
お昼ご飯の時間より少し早く、小雨から逃げるようにレストランに駆け込み、温かいご飯を食べて漸く人心地ついた。
残った飲み物をだらだら飲みながら、午後からどこへ行くか、エリアマップを広げて、行き先を任された御三家がそれを覗き込む。
「行きたいところある?」
「鮫」
「和訳しないでもいいでしょ。寒いから人は少ないだろうけど……」
「寒くね?」
「USJに来て鮫へ行かない選択肢があるのか」
「だから和訳しないでいいでしょ。まぁ凍える覚悟で行くのはありかもね」
「あ、蜘蛛男行きたい。あれなら部屋の中だろ」
「だからなんでお前らは和訳するの? 和訳すると途端に気持ち悪いし」
お土産屋に行くことも考えたら二つくらいが限界かねぇ、と松隆くんは時計を確認した。並ぶ時間も考慮すれば、確かにあと二つ行ければいいくらいかもしれない。両方とも人気アトラクションだし。
「じゃ、外から先に回ろうか。夕方のほうが寒いだろうし」
「だなー。あー、外寒そうだな」
窓の外に視線を向けると、今にも落ちてきそうな曇天が待っている。いつ雨が降り出してもおかしくないし、それより何より寒そうだ。
実際、外に出た瞬間、五人でウッとマフラーに顔を埋めてしまった。
「凍えそう……」
「松隆くんは暖炉の前でぬくぬくする冬以外知らなさそう」
「暖炉は見栄え以上の利点がないから好きじゃない」
「急に温室育ちを開き直ってくるじゃないですか」
「いちいち反応するのに飽きたんだよ」
にこやかな笑顔の裏には“黙れ”と読めた。確かにいい加減にしよう。
お陰で旅程は順調。三日目のUSJも、とりあえず午前中のところは何の問題も起こらなかった。せいぜい問題があるとすれば天気が悪くて極寒だということだけだ。
お昼ご飯の時間より少し早く、小雨から逃げるようにレストランに駆け込み、温かいご飯を食べて漸く人心地ついた。
残った飲み物をだらだら飲みながら、午後からどこへ行くか、エリアマップを広げて、行き先を任された御三家がそれを覗き込む。
「行きたいところある?」
「鮫」
「和訳しないでもいいでしょ。寒いから人は少ないだろうけど……」
「寒くね?」
「USJに来て鮫へ行かない選択肢があるのか」
「だから和訳しないでいいでしょ。まぁ凍える覚悟で行くのはありかもね」
「あ、蜘蛛男行きたい。あれなら部屋の中だろ」
「だからなんでお前らは和訳するの? 和訳すると途端に気持ち悪いし」
お土産屋に行くことも考えたら二つくらいが限界かねぇ、と松隆くんは時計を確認した。並ぶ時間も考慮すれば、確かにあと二つ行ければいいくらいかもしれない。両方とも人気アトラクションだし。
「じゃ、外から先に回ろうか。夕方のほうが寒いだろうし」
「だなー。あー、外寒そうだな」
窓の外に視線を向けると、今にも落ちてきそうな曇天が待っている。いつ雨が降り出してもおかしくないし、それより何より寒そうだ。
実際、外に出た瞬間、五人でウッとマフラーに顔を埋めてしまった。
「凍えそう……」
「松隆くんは暖炉の前でぬくぬくする冬以外知らなさそう」
「暖炉は見栄え以上の利点がないから好きじゃない」
「急に温室育ちを開き直ってくるじゃないですか」
「いちいち反応するのに飽きたんだよ」
にこやかな笑顔の裏には“黙れ”と読めた。確かにいい加減にしよう。