第四幕、御三家の幕引
「結局、お前と二人か」

 テラス席の向かいに座った松隆が、イヤそうに溜息を吐いた。お見合いの日から、どうにも胸に蟠りが残り、御三家を呼び出したものの、月影も桐椰も学業が忙しいときた。「俺だってお前とサシで話なんかしたくない」とぼやきながら、社会人の身分を恨んだ。

「……お前はいいよな、お見合いは薄野が最後だろ」

「ああ、そういえばそんなこともあったね。薄野が駄目ならどんなご令嬢連れてきても駄目だって分かったんだろうな、あの父親も」

「一応、界隈では指折りのお嬢様だからな」

「とはいえ、現に彼女がいるからっていうのもあるんじゃない。お前も適当に女見繕えば?」

 本当に無神経なこと言うな、コイツ。

「花高ミスターコンで堂々の一位を獲得しながら親友の彼女を引き摺り続けて他に女を見繕うこともなく卒業した王子様のセリフとは思えないな?」

「うるせぇ踏むぞ」

「言いながら本当に踏むんじゃねえよ、やめろ」

 さっきまで足を投げ出していた場所に踵が落ちてきた。危ねえなコイツ。

「……昔の話だよ。時々懐かしくもなるけど、それだけ。だから彼女と付き合ってるし」

「……ふーん」

 松隆の彼女の溺愛っぷりは鬱陶しいほど聞いているし、というかうざいし、今更聞きたくもない。大体、付き合った経緯も、要約すれば、好きになった相手に彼氏がいたから上手くいっていないのをいいことに横取りした、なんてものだ。こんな我儘坊ちゃんと二十年近く親友をやっている桐椰が理解できない。
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