第四幕、御三家の幕引
 苛立った声に辺りを見回すと、残る三人がいない。どうやら私達が立ち止まったままとは気付かず行ってしまったようだ。行き先が分かっているとはいえ、置いていくとはなんとも薄情。


「マップって月影くんが持ってなかったっけ? 場所分かるの?」

「分かるし、どうせどっかに地図の看板あるだろ。それにしてもくそ寒いな……」


 この天気で外のアトラクションはわりと拷問だし、ジョーズはこのままナシだな、と桐椰くんはぼやく。確かに、この天気に加えて水辺となれば冗談でなく凍えてしまうかもしれない。昨日はそう悪い天気ではなかったので、天気を見て予定を変えるべきだったかも。


「でも伊勢神宮も外歩くには変わりないもんねー」

「あぁ、天気の話? まぁ五日もあればどっかは天気悪くなるから仕方ねぇだろ」

「そういえば桐椰くんの御神籤、学業『精進すべし』だったね。大丈夫?」

「受験は再来年だから!」


 そんなことを言ったら昨日の御神籤の効果なんてあと半月程度だけどな。


「お前こそ、わりと散々な結果だったじゃねーか。縁談はまとまらねーし、失せ物は見つからねーし、挙句旅行はやめたほうがいいとか」


 そう、昨日引いた御神籤には修学旅行を全否定された。残り二日で帰るからいいや、と思ったものの、一日目に引いていなくてよかったとは思う。


「せいぜいよかったのは健康くらいだろ」

「学業も『このままで吉』だったからいいんだよー。私は桐椰くんと違って期末試験もいい成績とって減免貰わないといけないから、そこが大事」

「……ふーん 」


 どこか妙な相槌だった。でもそれを問いただす勇気はない。


「つか、完全に明日は雨だな、これ。天気いい日に水族館行くべきじゃなかったな……」

「あ、確かに、その手があったね」

「お前、明日はこっちの友達と会うんだろ? 天気悪くて大丈夫なのかよ」

「うーん、どうなんだろ? 予定は完全に友達に任せちゃってるんだよね」


 御三家とふーちゃんが梅田周辺を散策するというので、私と彼方は難波で会うことになっていた。彼方と会ってどこへ行くというわけでもないし、新幹線の時間もあるし、少し難波のショッピングモールでもぶらついて、ご飯を食べたら解散するくらいかもしれない。それなら雨に濡れる心配はない。


「今更だけど、お前、こっちに友達いたんだな」

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