第四幕、御三家の幕引
突然怒られた、かと思えばとんでもなく見当違いの心配をされるし、顔を上げれば妙に神妙な顔つきをしてるしで、目を点にしてしまった。私と彼方が付き合う? 隣に並んで手を繋いで歩く姿を想像しただけでも違和感しかない。頑張っても兄妹だ。
「いやいやいや。有り得ない有り得ない。あんな女の子大好きな人と付き合うとか想像もできない。ていうか、お兄さんがいたら こんな感じなんだろうなーってくらい恋愛対象外だし」
「……相手も同じだとは限らねぇだろ」
「うーん、女の子大好きだから、私が恋愛対象じゃないとは言えないんだけどね? 別に自意識過剰でもなんでもなく。そもそも来るもの拒まずなだけだし、多分私がその気にならない限り、そういう目では見ないんじゃないかな。あ、でも未成年は恋愛対象じゃないとは言うかも……」
「……あ、そ」
話しているうちに、桐椰くんの目が半分呆れを帯びてきた。きっと桐椰くんの頭の中には第二の彼方が浮かんでいることだろう。実際は第一も第二もなく、ただの彼方なのだけど。そして、私が彼方みたいなタイプに口説かれてほいほいついていくタイプではないと分かっているから、ただの杞憂だと気付いたのだろう。
「それなら、ま、楽しんでこいよ……」
「ていうか桐椰くん、散々回りくどいこと言っといて、ただのヤキモチ?」
けろりとその単語を口にすれば、桐椰くんの顔がみるみる赤く染まり始める。やっぱり、桐椰くんとは本音も建て前も全て煽りに変換してぶつけるほうがやりやすい。
「うるせーよ! つか自分でヤキモチとか言って恥ずかしくねーのかお前は!」
「えー、それはやっぱり、自分より緊張してる人を見ると緊張しなくなるのと同じかなー。私より恥ずかしいヤキモチ焼きの桐椰くんを見てたら恥ずかしさなんてなくな──」
「お前の煽り酷くなってんぞ! もうどうでもいい。好きにしろ。お前の面倒なんか見てやんねぇよ」
「えー、やだやだ、私の保護者やっててよー、桐椰くん」
「なんでだよ!」
はー、と額を押さえ、桐椰くんはエレベーターのボタンを押す。気が済んだらしい。ただ、エレベーターは最上階へ向かっている途中で、これが降りてきて、更に上がって、というのを待つとなると時間がかかりそうだ。
「……お前な」
「ん、なに?」
「いやいやいや。有り得ない有り得ない。あんな女の子大好きな人と付き合うとか想像もできない。ていうか、お兄さんがいたら こんな感じなんだろうなーってくらい恋愛対象外だし」
「……相手も同じだとは限らねぇだろ」
「うーん、女の子大好きだから、私が恋愛対象じゃないとは言えないんだけどね? 別に自意識過剰でもなんでもなく。そもそも来るもの拒まずなだけだし、多分私がその気にならない限り、そういう目では見ないんじゃないかな。あ、でも未成年は恋愛対象じゃないとは言うかも……」
「……あ、そ」
話しているうちに、桐椰くんの目が半分呆れを帯びてきた。きっと桐椰くんの頭の中には第二の彼方が浮かんでいることだろう。実際は第一も第二もなく、ただの彼方なのだけど。そして、私が彼方みたいなタイプに口説かれてほいほいついていくタイプではないと分かっているから、ただの杞憂だと気付いたのだろう。
「それなら、ま、楽しんでこいよ……」
「ていうか桐椰くん、散々回りくどいこと言っといて、ただのヤキモチ?」
けろりとその単語を口にすれば、桐椰くんの顔がみるみる赤く染まり始める。やっぱり、桐椰くんとは本音も建て前も全て煽りに変換してぶつけるほうがやりやすい。
「うるせーよ! つか自分でヤキモチとか言って恥ずかしくねーのかお前は!」
「えー、それはやっぱり、自分より緊張してる人を見ると緊張しなくなるのと同じかなー。私より恥ずかしいヤキモチ焼きの桐椰くんを見てたら恥ずかしさなんてなくな──」
「お前の煽り酷くなってんぞ! もうどうでもいい。好きにしろ。お前の面倒なんか見てやんねぇよ」
「えー、やだやだ、私の保護者やっててよー、桐椰くん」
「なんでだよ!」
はー、と額を押さえ、桐椰くんはエレベーターのボタンを押す。気が済んだらしい。ただ、エレベーターは最上階へ向かっている途中で、これが降りてきて、更に上がって、というのを待つとなると時間がかかりそうだ。
「……お前な」
「ん、なに?」