第四幕、御三家の幕引
「駿くんのやったことが間違ってたとは思わないし、俺でもそうしただろうとは思う。でもそれで本当に女遊びし始めたってんだからな」
結局誰も救われてねーしな、とは言うけれど、じゃあどうすれば救われたのかは教えてくれなかった。
「で、亜季ちゃんが付き合ってるのは、あの鹿島くんだっけ」
「そっか、鹿島くんに会ったことあるんだっけ」
透冶くんが死んだとき、彼方が学校に乗り込んだと聞いた。
「あぁ。年不相応に落ち着いてよくできる子だよな。総くんほどじゃないけど」
「……そうなの?」
「俺はよく知らないけど、鹿島家の子ですし? そりゃーよくできてるんじゃないですかね。受け答えっていうか、ほら、高校生くらいだと敬語も下手だったりするけど、当たり前にそんなことないし。つか、同級生一人死んだにしては落ち着きすぎてて逆に怪しいってあの時は思った」
だから、付き合うには申し分ない相手だ、とでもいうのだろうか。彼方が、御三家のように鹿島くんに嫌悪感を示すことはない。
その事実が気に食わなかった。幼稚な感情かもしれないけれど、私が鹿島くんに対して抱いている感情を彼方にも共有してほしかった。だって、鹿島くんは……。
「……疑わなかったの? 怪しいって思ったなら」
「自殺なのは間違いなかったしな」
「……なんで間違いないって分かったの?」
「遺書あったし」
「あったの?」
さらりとした彼方の声とは裏腹に、私は素っ頓狂な声を出してしまった。そのせいか、彼方が驚いた顔をする。
「あったよ。つか、そうじゃなきゃご両親も納得しないだろ」
「え、でも……御三家はそんなこと一言も……」
「そりゃな、本当は自殺の理由も教えないことにしてたんだから。そのせいでアイツらがあんなことするとは思わなかったけど」
「……教えてあげればよかったのに」
「幼馴染が学校生活で色々悩んだ末、その相談は誰にもせずに自殺しました、なんて知らないに越したことはないと思うけどな」
……それは、そうだけれど。
「納得のいかない顔だな」
ふん、と彼方は鼻で笑った。
「知ってることが増えるとさぁ、悩むことが増えるんだよ。あれもこれも、材料があればあるほど考えることにはきりがない。……いっそのこと、誰かのせいにしてたほうが気楽だろ」
結局誰も救われてねーしな、とは言うけれど、じゃあどうすれば救われたのかは教えてくれなかった。
「で、亜季ちゃんが付き合ってるのは、あの鹿島くんだっけ」
「そっか、鹿島くんに会ったことあるんだっけ」
透冶くんが死んだとき、彼方が学校に乗り込んだと聞いた。
「あぁ。年不相応に落ち着いてよくできる子だよな。総くんほどじゃないけど」
「……そうなの?」
「俺はよく知らないけど、鹿島家の子ですし? そりゃーよくできてるんじゃないですかね。受け答えっていうか、ほら、高校生くらいだと敬語も下手だったりするけど、当たり前にそんなことないし。つか、同級生一人死んだにしては落ち着きすぎてて逆に怪しいってあの時は思った」
だから、付き合うには申し分ない相手だ、とでもいうのだろうか。彼方が、御三家のように鹿島くんに嫌悪感を示すことはない。
その事実が気に食わなかった。幼稚な感情かもしれないけれど、私が鹿島くんに対して抱いている感情を彼方にも共有してほしかった。だって、鹿島くんは……。
「……疑わなかったの? 怪しいって思ったなら」
「自殺なのは間違いなかったしな」
「……なんで間違いないって分かったの?」
「遺書あったし」
「あったの?」
さらりとした彼方の声とは裏腹に、私は素っ頓狂な声を出してしまった。そのせいか、彼方が驚いた顔をする。
「あったよ。つか、そうじゃなきゃご両親も納得しないだろ」
「え、でも……御三家はそんなこと一言も……」
「そりゃな、本当は自殺の理由も教えないことにしてたんだから。そのせいでアイツらがあんなことするとは思わなかったけど」
「……教えてあげればよかったのに」
「幼馴染が学校生活で色々悩んだ末、その相談は誰にもせずに自殺しました、なんて知らないに越したことはないと思うけどな」
……それは、そうだけれど。
「納得のいかない顔だな」
ふん、と彼方は鼻で笑った。
「知ってることが増えるとさぁ、悩むことが増えるんだよ。あれもこれも、材料があればあるほど考えることにはきりがない。……いっそのこと、誰かのせいにしてたほうが気楽だろ」