第四幕、御三家の幕引
「真実なんて誰にも分りやしねーよ。それでもって、藻掻いて見つけ出した真実は、いつだって想像するより遥かに残酷だ。そんな真実を手に入れて頭を抱えてる姿を見るくらいなら、都合のいい真実に納得してるんでいいんだ」
大切な誰かが死んだときなんて、特に。そう付け加えられて、つい数十秒前の自分の解釈が間違っていたことに気が付いた。都合のいい一つを真実だと思ってほしい、というのが他人に向けられた言葉なのはそうだけれど、彼方自身のスタンスがその裏返しなわけじゃない。
ゴトリと、ソーサーに置いたカップが、いやに重たい音を立てた。
「……じゃあ、鹿島くんが、透冶くんが死ねばいいと思って、透冶くんを責めたとしても、それは、透冶くんが死んだ本当の理由とは言えないんだ……」
「……正確には、透冶くんが死んだ唯一の理由とは言えないってところだろうな」
冷静な声だったけれど、その指先にギリッと力が籠ったのは見逃さなかった。
「鹿島くんがそう言ったのか?」
「……うん」
「なんで鹿島くんと付き合ってんの?」
「……なんとなく」
下手に言い訳すればするほど墓穴を掘る気がして、ほとんど答えのような返事をした。でも彼方がそれ以上追及してくる気配はない。
「……あの、さ。鹿島くんと松隆くんって、昔、何かあったの?」
「さぁ、知らないけど。なんで?」
「……本当かは分からないけど、鹿島くん、松隆くんが嫌いだから透冶くんを殺して、月影くんとか桐椰くんを嵌めたって言うから」
「……何かあるとしても、俺はマジで知らないな。仮にお家事情があるんだとしたら総くんに聞くか」
考え込んだ彼方は、ふと思い出したようにスマホを取り出した。
「栄一に聞くか、だな」
「……松隆くんのお兄さんだっけ?」
「あぁ。総くん、プライド高いしなー。もし本当に鹿島くんとゴチャッてるとしても、栄一に相談はしねーだろうなー」
さっきまでの表情とは打って変わって、彼方はいつも通りの明るい調子に戻った。うきうきと、いたずらでもするようにスマホをいじり始める。
「最近連絡してなかったし聞いてみるか。鹿島くんって名前なんだっけ?」
「明貴人」
「あー、確かにそんな名前だった。ま、空振りになるかもしれねーけど、返事きたら教えるよ」
大切な誰かが死んだときなんて、特に。そう付け加えられて、つい数十秒前の自分の解釈が間違っていたことに気が付いた。都合のいい一つを真実だと思ってほしい、というのが他人に向けられた言葉なのはそうだけれど、彼方自身のスタンスがその裏返しなわけじゃない。
ゴトリと、ソーサーに置いたカップが、いやに重たい音を立てた。
「……じゃあ、鹿島くんが、透冶くんが死ねばいいと思って、透冶くんを責めたとしても、それは、透冶くんが死んだ本当の理由とは言えないんだ……」
「……正確には、透冶くんが死んだ唯一の理由とは言えないってところだろうな」
冷静な声だったけれど、その指先にギリッと力が籠ったのは見逃さなかった。
「鹿島くんがそう言ったのか?」
「……うん」
「なんで鹿島くんと付き合ってんの?」
「……なんとなく」
下手に言い訳すればするほど墓穴を掘る気がして、ほとんど答えのような返事をした。でも彼方がそれ以上追及してくる気配はない。
「……あの、さ。鹿島くんと松隆くんって、昔、何かあったの?」
「さぁ、知らないけど。なんで?」
「……本当かは分からないけど、鹿島くん、松隆くんが嫌いだから透冶くんを殺して、月影くんとか桐椰くんを嵌めたって言うから」
「……何かあるとしても、俺はマジで知らないな。仮にお家事情があるんだとしたら総くんに聞くか」
考え込んだ彼方は、ふと思い出したようにスマホを取り出した。
「栄一に聞くか、だな」
「……松隆くんのお兄さんだっけ?」
「あぁ。総くん、プライド高いしなー。もし本当に鹿島くんとゴチャッてるとしても、栄一に相談はしねーだろうなー」
さっきまでの表情とは打って変わって、彼方はいつも通りの明るい調子に戻った。うきうきと、いたずらでもするようにスマホをいじり始める。
「最近連絡してなかったし聞いてみるか。鹿島くんって名前なんだっけ?」
「明貴人」
「あー、確かにそんな名前だった。ま、空振りになるかもしれねーけど、返事きたら教えるよ」