第四幕、御三家の幕引
「鹿島くん、何してるの?」

「生徒会長の仕事だよ」

「だからそれ何?」

「今年の活動報告書の作成」

「まだ就いてから三カ月では?」

「去年から就いてるから一年分書けるだろ、馬鹿なのか」

「普通の生徒会長はそうじゃないと思うんですけど、それは例年通りの業務なんですか?」

「報告は細かくて多いほうが喜ぶ人もいるもんでね」


 ふーん、鹿島くんってやっぱり生徒会長としてはちゃんと有能なんだな。水族館での桐椰くんの言葉を思い出した。性格は最悪だけど性能はそこそこらしい。


「で、君が最近放課後も生徒会室にいるのは何でだ?」


 コーヒーを持っていくと、鹿島くんはパソコンを閉じた。どうやら小休止するつもりらしく、引き出しから焼き菓子も取り出した。しかも二つで、一つは私にくれるときた。毒入りかな。


「毒は入ってない」

「うっわ心読まれた、気持ち悪い」

「わざとらしい反応をするな、気持ち悪い」

「生徒会室は暖かいだけじゃなくてコーヒー飲み放題だと気付いたので、節約のために」

「俺のポケットマネーだ」

「じゃあ慰謝料ですね」

「寧ろ払え」

「相殺しましょう」


 鹿島くん曰くの高いコーヒーを飲んでみたけど、確かに味の違いは分からなかった。値段が二倍でも三倍でも違うというのなら、インスタントで何が悪いのかと言いたくなってしまう。


「ところで、君のお土産がマドラーとはね……この寒い季節に使うわけないだろ」

「壊さないように大事に大事にしまってくれるんですね、ありがたいことです」

「筆立てにでもさしとくよ」

「なんですかそれは、桐椰くんへの嫌がらせですか。鹿島くんの嫌がらせの陰湿さは留まるところを知りませんね」

「センスがない君への当てつけだ」

「ははーん、夏炉冬扇とかけてるんですかね、さっむ!」

「呆れて返す言葉もないギャグはやめろ」


 ところで、と鹿島くんはスマホを取り出した。なんだなんだと画面を覗き込むとするとスッと画面を背けられる。どうやら私にプレイベートを見せる気はないらしい。


「クリスマスの予定だけど」

「ゲッ、デートしろと?」

「デートするとしたら光栄に思え。そしてしないから安心しろ」

「あ、そうなの?」

「したかったのか?」

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