第四幕、御三家の幕引
 足を開いてベッドに座り、だらんとした腕を膝にのせているその姿は、乱れた髪や制服もあいまって、どこかヤンキーじみていた。

 そういえば、鶴羽樹と鹿島くんとの関係も謎だったな……。あとは藤木さんの事件に関わってた人達とか……。鹿島くんがあの手の人達と関係してるとすると、鹿島くんも元ヤン……? だとしたら幕張匠(わたし)を恨んでるのも頷ける。あれ、でも結局それは御三家を潰すっていう本当の理由を知られないためのものだったんだっけ。よく分からなくなってきた。


「……ていうかさぁ、鹿島くん、家に帰れば? 完全に仕事できないでしょ、それ」

「今日が終業式だってことを忘れたか。今日で終わらせる必要があるんだよ」

「桐椰くんに手伝ってもらえば? 有能だよ、御三家のわんちゃん」

「この間副会長になった桐椰に今年のまとめができるはずないだろ」

「じゃあその点では蝶乃さんが落選して残念だったんだね」

「蝶乃は根本的なスペックが無能だから意味がない」

「見た目通りの人なんだね。あれ、あの人は? なんか腹心とか言われてるじゃん、あの……」

宗政(しゅうせい)の話か?」

「誰」

「萩原」

「そうそれ」


 クラスマッチで見かけた、スポーツ刈りの優等生っぽい人だ。存在は知ってるし、噂も何度か聞いたことはある。ただ、生徒会室に出入りしている様子はほとんど見ない。会うとしても私と入れ違いで出ていくレベルだし、鹿島くんと話している様子は数えるほどしか見たことないし、お陰で声もあまり分からない。


「年末は宗政こそ忙しいんだよ。俺の手伝いをしろなんて無茶だ」

「萩原くんが仕事してる様子見ないんだけど……どこで仕事してるの?」

「ここでだ、が、朝だ。部活で放課後は来れない。昼休みか放課後にしか来ない君はあまり会わないんだろう」

「ふーん」

「で、君はいつまでここにいるんだ」

「いつも通りの時間までですけど」

「養母との仲が悪いからって本当に毎日ここで時間を潰すとはね」


 睨むことで返事に代えてみせれば、具合は悪いくせに私を嘲るのはいつも通りやってみせる。


「いつまでこんなことを続けるつもりなんだ?」

「別にいいじゃないですか、私の自由で鹿島くんに迷惑はかけてないでしょ」

< 88 / 463 >

この作品をシェア

pagetop