第四幕、御三家の幕引
 ということは、何か有益な情報があったのか……。松隆くんはないと言い張っていた確執が二人に……?

『てか、ややこしい話だし、会って話すよ。年末暇?』

『大体暇だと思うけど、明日か明後日また連絡する』

 ややこしい話……。もしかして写真の女の子は本当に鹿島くんの元カノ? 写真を持ってるってことは蝶乃さんと違って本気で好きだったはず。だったら蝶乃さんと付き合う理由はないし、そもそも高校生になってすぐに蝶乃さんは桐椰くんから鹿島くんに乗り換えたということは、鹿島くんは高校一年生時点でフリー。やっぱり亡くなった人? 鹿島くんの姉か妹とか……。……血が繋がってるから好きだけど言えないとか、血は繋がってなくても姉弟になってしまったとか……。

 とりあえず、他に情報のない生徒手帳は床に置きなおし、鹿島くんの机も離れた。代わりに桐椰くんの机につく。引き出しを開けてみると筆記用具が綺麗に整頓されていた。筆ペンまである。あて名書きがなんとかって言ってた時期があったから、きっとそれ用だったんだろう。次の引き出しを開けると、OBOGの名簿っぽいものも出てきた。仕事してるんだなぁ、桐椰くん。

 そんなことをして生徒会室を物色し、コーヒーを淹れて飲んで暫く、休憩室の扉が開いて鹿島くんが起きてきた。寝癖のついた髪に眼鏡をかけて、まるで売れない小説家みたいだ。 じっと視線を向けていても、鹿島くんは無視して生徒会室を横切り、自分のカバンの中からタオルを取り出し、休憩室に戻っていった。

 一体何があったのか、暫くして休憩室から出てきた鹿島くんを見て分かった。どうやら汗を流してきたらしい。熱があるのにそんなことしたら余計に酷くなるのでは。私には関係ないけど。


「コーヒー」


 そして机につくと、偉そうに私に命令した。なんだと。


「えー、熱があるのにシャワー浴びた挙句コーヒーなんか飲んでいいんですか? 大人しく帰って寝たほうがいいんじゃないですかねー」

「いいから早く淹れろ。俺は帰りたい」

「貸し一つですよ!」

「病人相手に貸し借り言って恥ずかしくないのか、人として」

「人として恥ずかしい、鹿島くんにだけは言われたくない!」


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