第四幕、御三家の幕引


 下駄箱を越えて聞こえる声に、立ち尽くすしかできなかった私を置いて、鹿島くんは玄関扉のほうへ向かう。最後の情けとばかりに振り向いた顔は、ただ具合が悪いだけのようで、特別意味深なものなどなく。


「じゃ、よいお年を」


 どうでもいい世間話をしただけかのような顔を向けて、鹿島くんは消えた。
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