大丈夫、浮気じゃないから。
「……学祭の日、たまたま、紘のスマホに沙那からLINEがきたのが見えたんだよね。『ちゃんと愛されてるって分かってよかったじゃーん』って」
紘のスマホ画面に表示されたメッセージを、一言一句違えず覚えている。あのメッセージは、妙に頭に引っかかった。
「……どういう意味です?」
「……私、学祭の日に、紘に言っちゃったんだよね。『茉莉に彼氏ができて残念だったね』って」
「……大宮先輩の反応は?」
「紘は、まあ、そもそも好きなのは私なんだから関係ないって感じの口振りだった。その後、沙那から紘に、そのLINEメッセージが入ってて」
つまり──。続きを言う前に、松隆は眉を顰めた。
「つまり、津川先輩が大宮先輩を唆したってことですか?」
もしかしたら、紘は、私があまりにも松隆と仲が良いことに不安を覚えたのではないだろうか。それを沙那に話してしまったのではないだろうか。そして沙那に「他の女子と仲良くして、嫉妬されるか試したら」と言われたんじゃないだろうか。同じ学部で、美人で、彼氏のいない茉莉が、その「他の女子」として適任だったのではないだろうか。──あのメッセージを見たことによって、そんな仮説が立った。
でも、これだけではただの憶測だ。あのメッセージは、紘が沙那に「茉莉のことで嫉妬された」と、ただそれだけを話しても自然に出てくるものだ。沙那と紘がわざわざ策を弄したことの証拠にはならない。
「……紘は、茉莉の誕生日に、経済の友達と一緒にプレゼントを贈ってた。沙那が、そのことを『彼女と友達の扱いが一緒だってことで有り得ないんじゃないか』って言ったんだよね」
「お前に関係ないだろって話ですけどね」
「それはそうなんだけど、まあ、沙那のことだから」松隆の悪態に笑ってしまいながら「でも、紘は私に嫉妬してほしかっただけなんじゃないの、って沙那に言ったんだよ。そしたら返ってきた沙那のセリフは『誕プレにバッグってことは、本気になったんじゃない?』」
「『本気になった』ですか。まあ、引っかかりますね」
疑問を差し挟むべき言い回しを的確に捕らえた松隆は、考え込むように腕を組んだ。
「彼女以外の女子に本命っぽいプレゼントを渡してるとき、下心を勘ぐるとしても、普通は『本気なんじゃない』って言いますよね」
紘のスマホ画面に表示されたメッセージを、一言一句違えず覚えている。あのメッセージは、妙に頭に引っかかった。
「……どういう意味です?」
「……私、学祭の日に、紘に言っちゃったんだよね。『茉莉に彼氏ができて残念だったね』って」
「……大宮先輩の反応は?」
「紘は、まあ、そもそも好きなのは私なんだから関係ないって感じの口振りだった。その後、沙那から紘に、そのLINEメッセージが入ってて」
つまり──。続きを言う前に、松隆は眉を顰めた。
「つまり、津川先輩が大宮先輩を唆したってことですか?」
もしかしたら、紘は、私があまりにも松隆と仲が良いことに不安を覚えたのではないだろうか。それを沙那に話してしまったのではないだろうか。そして沙那に「他の女子と仲良くして、嫉妬されるか試したら」と言われたんじゃないだろうか。同じ学部で、美人で、彼氏のいない茉莉が、その「他の女子」として適任だったのではないだろうか。──あのメッセージを見たことによって、そんな仮説が立った。
でも、これだけではただの憶測だ。あのメッセージは、紘が沙那に「茉莉のことで嫉妬された」と、ただそれだけを話しても自然に出てくるものだ。沙那と紘がわざわざ策を弄したことの証拠にはならない。
「……紘は、茉莉の誕生日に、経済の友達と一緒にプレゼントを贈ってた。沙那が、そのことを『彼女と友達の扱いが一緒だってことで有り得ないんじゃないか』って言ったんだよね」
「お前に関係ないだろって話ですけどね」
「それはそうなんだけど、まあ、沙那のことだから」松隆の悪態に笑ってしまいながら「でも、紘は私に嫉妬してほしかっただけなんじゃないの、って沙那に言ったんだよ。そしたら返ってきた沙那のセリフは『誕プレにバッグってことは、本気になったんじゃない?』」
「『本気になった』ですか。まあ、引っかかりますね」
疑問を差し挟むべき言い回しを的確に捕らえた松隆は、考え込むように腕を組んだ。
「彼女以外の女子に本命っぽいプレゼントを渡してるとき、下心を勘ぐるとしても、普通は『本気なんじゃない』って言いますよね」