大丈夫、浮気じゃないから。
 うちのサークルで一、二を争うイケメンであるにも関わらず、烏間先輩に言い寄る女子がいないのは、烏間先輩は他大に彼女がいるからだ。それだけなら付け入る隙を考える女子もいるかもしれないけれど、3年近く付き合っているらしいと聞けば、この大学3年間に烏間先輩が一切よそ見をしなかったことが分かるので、あえて手を出す女子はいない。


「……彼女さんに心配とかされないんです? ほら、先輩、一応イケメンですし」

「お前、俺のこと馬鹿にしてるだろ」笑いながら「特に心配されたことはないかな」

「彼女さん、あんまり気にしないタイプなんですか? その、彼氏が別の大学にいて、しかもイケメンで、テニサーなんてものに入ってたら、普通は心配になると思うんですけど」


 「普通は」とあくまで一般論であることを強調するふりをしたけれど、少なくとも、私が烏間先輩の彼女の立場ならそうだ。同じ大学で同じサークルの現実でさえ、私は紘の交友関係にやきもきしてしまうのに、これで別の大学だったらと思うと、想像するだけでも心がざわついてしまう。

 でも、逆に、何も知らなければ気にならないような気もした。実際、紘はサッカーサークルにも入っているし、そっちには女子マネージャーもいる。それでもって、部員はマネージャーも含めて仲が良く、紘はマネージャーも含めたメンバーで度々旅行をしている。それでも、そのマネージャーの子達との関係が気になったことはない。そのマネージャーたちと茉莉との違いは、一体何なのだろうと、時々首を捻る。

 烏間先輩は「心配ねえ……」と覚えがなさそうに首を捻った。


「何かにつけて心配されるなんてことは全くないけど、全然気にならないタイプじゃないとは思う。周りに可愛くて仲良い子いるとやきもきはするんじゃないかな。それこそ空木の話とかするけど、空木が大宮と付き合ってなかったら嫉妬されたかも」

「あ、いま私のこと可愛いって言ってくださいました?」

「言ったけど、大宮に聞かれたらテニスでコテンパンにされそうな気がするから撤回しよう」

「そんなことで嫉妬なんかしませんよ、紘は」


 せいぜい「よかったじゃん、可愛いって言ってくれる先輩いて」と返事をしてくれる程度だ。


「そういう先輩は、彼女さんに嫉妬されないんですか?」

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