大丈夫、浮気じゃないから。
私はただ、紘と茉莉があんまりにも仲が良いから──だから、気になるというのは、浮気を疑っているということだろうか。
「そもそも何を浮気と定義するかが問題でして」
「お、偉いな、ちゃんと定義から入って」
これで一端の法学部生だな、なんて茶化されたけど、スルーした。
「先輩にとって浮気の定義とは」
「んー、俺は気持ちが恋人以外の相手に動くことかな」
「つまり先輩は相手の主観的な側面を問題にするというわけですね」
「空木は客観面を問題にするの?」
「……そうですね。気持ちが動いてなくても、恋人以外の相手と恋人らしい行動をとっていたらそれは浮気だと思いますから」
「恋人以外と恋人らしい行動をとるってことは、その別の相手のことを恋人のように思ってるってことですし、結局気持ちが動いていることには変わりないのでは?」
松隆は経済学部のくせに法学部みたいな指摘をする。
「相手の客観的行動から主観面を推察するって話ですから、烏間先輩と考え方の違いはないように思いますけど」
確かに、まさしく私が悩んでいるのはそれだ。紘は茉莉と楽しそうに過ごしている、ということは茉莉のことが好きなのではないか? ぐぬ……と押し黙る私の横で、烏間先輩が「さあ、一概には言えないんじゃないかな」と肩を竦める。
「空木は、恋人以外を好きになった場合を浮気って定義するわけじゃないだろ?」
「といいますと」
「極端なたとえをすると、例えば彼氏が他の女と寝たとするだろ。あー、まあ、寝るはいきすぎか、キスくらいにしとくか」
私がしかめっ面をしたのを見て、烏間先輩は慌てて付け加えた。
「でも彼氏は他の女のことは別に好きじゃなくて、彼女のことが好き。この場合に浮気と呼ぶなら、純粋に主観だけを問題にするとはいいがたいな」
「……じゃあ先輩はキスくらいなら許せます?」
「イヤではあるけど、まあ、浮気とは言わないかもなあ」
あんまり想像したくないな、と先輩は苦笑いした。ベッドに座った松隆は「うーん」と考え込む。
「でも、烏間先輩の定義は男特有じゃないですかね」
「ん?」
「好きじゃなくてもできるのは男だけでしょう。女でもいるかもしれませんけど、まあ、稀では」
「確かにな」
「そもそも何を浮気と定義するかが問題でして」
「お、偉いな、ちゃんと定義から入って」
これで一端の法学部生だな、なんて茶化されたけど、スルーした。
「先輩にとって浮気の定義とは」
「んー、俺は気持ちが恋人以外の相手に動くことかな」
「つまり先輩は相手の主観的な側面を問題にするというわけですね」
「空木は客観面を問題にするの?」
「……そうですね。気持ちが動いてなくても、恋人以外の相手と恋人らしい行動をとっていたらそれは浮気だと思いますから」
「恋人以外と恋人らしい行動をとるってことは、その別の相手のことを恋人のように思ってるってことですし、結局気持ちが動いていることには変わりないのでは?」
松隆は経済学部のくせに法学部みたいな指摘をする。
「相手の客観的行動から主観面を推察するって話ですから、烏間先輩と考え方の違いはないように思いますけど」
確かに、まさしく私が悩んでいるのはそれだ。紘は茉莉と楽しそうに過ごしている、ということは茉莉のことが好きなのではないか? ぐぬ……と押し黙る私の横で、烏間先輩が「さあ、一概には言えないんじゃないかな」と肩を竦める。
「空木は、恋人以外を好きになった場合を浮気って定義するわけじゃないだろ?」
「といいますと」
「極端なたとえをすると、例えば彼氏が他の女と寝たとするだろ。あー、まあ、寝るはいきすぎか、キスくらいにしとくか」
私がしかめっ面をしたのを見て、烏間先輩は慌てて付け加えた。
「でも彼氏は他の女のことは別に好きじゃなくて、彼女のことが好き。この場合に浮気と呼ぶなら、純粋に主観だけを問題にするとはいいがたいな」
「……じゃあ先輩はキスくらいなら許せます?」
「イヤではあるけど、まあ、浮気とは言わないかもなあ」
あんまり想像したくないな、と先輩は苦笑いした。ベッドに座った松隆は「うーん」と考え込む。
「でも、烏間先輩の定義は男特有じゃないですかね」
「ん?」
「好きじゃなくてもできるのは男だけでしょう。女でもいるかもしれませんけど、まあ、稀では」
「確かにな」