大丈夫、浮気じゃないから。
頷き合う2人に自分の顔がひきつるのが分かった。よく聞く話だけれど、男の口から直接聞くと信憑性が増す。素面で聞きたい話ではない。
「だから純粋に相手の主観面だけを問題にするのは男だけなんじゃないですかね」
「そうかもな。って考えると、空木の言った定義は俺のとは違うな」
「ええ、僕の指摘は間違ってましたね。空木先輩の定義は、相手の主観面に主眼を置くわけじゃない」
「……そうだね。仮に相手の本心が間違いなく自分に向いてるって分かってても、それでも手をつなぐとかキスをするとか、してたら浮気って言うかもなあ」
頬杖とともに溜息を吐いた。いま口にした言葉に嘘はない。でも、なんとなく、自分の定義には釈然としないところがあった。気持ちが変わっていなければ、それを浮気と呼ぶことには違和感があるような気もする。
「松隆は? 先輩達にばっか言わせてないで、どうなの。彼女がなにしたら浮気っていう?」
「そうですね……」
考えたこともないような口ぶりだ。それもそうだ、松隆みたいに綺麗な顔をした男なら、彼女のほうが夢中で手放さないだろう。
「気持ちにかかわらず、キスしたらアウトですかね。僕は結構厳しいほうかもしれません」
「他の男とキスしてたら別れる?」
烏間先輩がそう畳みかけるけれど「相手の男が無理矢理とかなら話は別ですけど、まあイヤですし、事故以外別れるんじゃないですかね」と意見は変わらない。さっきと同じく、経験があるわけじゃないので想像ですが、といったニュアンスだった。
「そもそも、好きでもない相手とキスするってどんな場面です? なくないですか、そんなこと」
「飲み会でうっかりとかあるんじゃないか?」
「飲み会で何をどうやったらうっかりするんですか? 偶然隣に座った女子と偶然顔の高さが同じで偶然一方が顔を傾けてて偶然唇がぶつかる?」
立て板に水のごとく、そんなに偶然が重なるなど有り得ないと、つまり事故なんて起こり得ないのだと力説しているように聞こえて、先輩と笑ってしまった。
「なに、元カノにそういうことあったの」
「ないですけど、飲み会だからどうとか、そういうのがよく分からないなと思ってるだけです。まあ、僕が酒を飲めたら話は違うかもしれませんけどね」
「だから純粋に相手の主観面だけを問題にするのは男だけなんじゃないですかね」
「そうかもな。って考えると、空木の言った定義は俺のとは違うな」
「ええ、僕の指摘は間違ってましたね。空木先輩の定義は、相手の主観面に主眼を置くわけじゃない」
「……そうだね。仮に相手の本心が間違いなく自分に向いてるって分かってても、それでも手をつなぐとかキスをするとか、してたら浮気って言うかもなあ」
頬杖とともに溜息を吐いた。いま口にした言葉に嘘はない。でも、なんとなく、自分の定義には釈然としないところがあった。気持ちが変わっていなければ、それを浮気と呼ぶことには違和感があるような気もする。
「松隆は? 先輩達にばっか言わせてないで、どうなの。彼女がなにしたら浮気っていう?」
「そうですね……」
考えたこともないような口ぶりだ。それもそうだ、松隆みたいに綺麗な顔をした男なら、彼女のほうが夢中で手放さないだろう。
「気持ちにかかわらず、キスしたらアウトですかね。僕は結構厳しいほうかもしれません」
「他の男とキスしてたら別れる?」
烏間先輩がそう畳みかけるけれど「相手の男が無理矢理とかなら話は別ですけど、まあイヤですし、事故以外別れるんじゃないですかね」と意見は変わらない。さっきと同じく、経験があるわけじゃないので想像ですが、といったニュアンスだった。
「そもそも、好きでもない相手とキスするってどんな場面です? なくないですか、そんなこと」
「飲み会でうっかりとかあるんじゃないか?」
「飲み会で何をどうやったらうっかりするんですか? 偶然隣に座った女子と偶然顔の高さが同じで偶然一方が顔を傾けてて偶然唇がぶつかる?」
立て板に水のごとく、そんなに偶然が重なるなど有り得ないと、つまり事故なんて起こり得ないのだと力説しているように聞こえて、先輩と笑ってしまった。
「なに、元カノにそういうことあったの」
「ないですけど、飲み会だからどうとか、そういうのがよく分からないなと思ってるだけです。まあ、僕が酒を飲めたら話は違うかもしれませんけどね」