大丈夫、浮気じゃないから。
「あ、もちろん、違うって言っておきましたよ。富野先輩と大宮先輩はただの友達ですし。なにより」
だんまりを決め込む私に、松隆はとどめの一撃を放つべく、一拍溜める。
「一応大宮先輩は生葉先輩の彼氏ですからね」
すくっと私は立ち上がった。気合を入れるように、黒髪のポニーテールを結び直し、テニスコートの金網を背に、座っている松隆を見下ろす。
「……松隆。今日の夜の予定は」
「すみません、今日は予定が合いません。明後日なら空いてますので、飲みに行くなら明後日はいかがでしょう」
「それで結構です。そのまま空けておいてください」
「いいですけど、僕と飲みに行く暇があったら、大宮先輩を叱ってはいかがですか?」
松隆が視線を向ける先では、テニスコートに来たというのにジャージに着替えもせず、部室の前でだらだらと駄弁る2人の姿があった。気付いてはいたけど、それをわざわざ指摘する松隆の性格の悪さが憎い。
「いいから行くよ!」
2日後の夜、大学の近くにある居酒屋とバーの間の子みたいな店にて「で?」と松隆はカクテルジュースのグラス片手に早速愚痴を聞く姿勢をみせてくれた。
「この間は何があったんですか?」
「……何かあったと決めつけるのをやめなさい」
「じゃあ何もないのにあんなサイトを見てたんですか?」
「紘があんまりにも頻繁に沙那と飲みに行くので、ちょっともやもやして『女子と2人で飲みに行くときには一言くらい言ってほしいなー』と言いました。すると後日、沙那に『生葉って束縛とかするタイプなんだね。紘と飲んでるときに、秘密ねって口留めされちゃった』と言われました!」
すぐに白状した私に、松隆は「くっ……」と声を上げて笑いそうになるのを堪えてみせる。
「津川先輩、別れさせ屋みたいですね」
「別れさせ屋ならせめて被害者面くらいさせてほしいなあ!」
津川沙那もまた、私達と同じテニスサークルのメンバーで、かつ、私と同じ法学部だ。
「有り得なくない? なんで沙那本人にその話をするの? でもって『秘密ね』ってなに? 秘密にしろなんて言ってないじゃん! 一言断ってくれてもいいじゃんって言ってるんじゃん! そしてそれを私にわざわざご丁寧に伝える沙那! なにこれ!」
だんまりを決め込む私に、松隆はとどめの一撃を放つべく、一拍溜める。
「一応大宮先輩は生葉先輩の彼氏ですからね」
すくっと私は立ち上がった。気合を入れるように、黒髪のポニーテールを結び直し、テニスコートの金網を背に、座っている松隆を見下ろす。
「……松隆。今日の夜の予定は」
「すみません、今日は予定が合いません。明後日なら空いてますので、飲みに行くなら明後日はいかがでしょう」
「それで結構です。そのまま空けておいてください」
「いいですけど、僕と飲みに行く暇があったら、大宮先輩を叱ってはいかがですか?」
松隆が視線を向ける先では、テニスコートに来たというのにジャージに着替えもせず、部室の前でだらだらと駄弁る2人の姿があった。気付いてはいたけど、それをわざわざ指摘する松隆の性格の悪さが憎い。
「いいから行くよ!」
2日後の夜、大学の近くにある居酒屋とバーの間の子みたいな店にて「で?」と松隆はカクテルジュースのグラス片手に早速愚痴を聞く姿勢をみせてくれた。
「この間は何があったんですか?」
「……何かあったと決めつけるのをやめなさい」
「じゃあ何もないのにあんなサイトを見てたんですか?」
「紘があんまりにも頻繁に沙那と飲みに行くので、ちょっともやもやして『女子と2人で飲みに行くときには一言くらい言ってほしいなー』と言いました。すると後日、沙那に『生葉って束縛とかするタイプなんだね。紘と飲んでるときに、秘密ねって口留めされちゃった』と言われました!」
すぐに白状した私に、松隆は「くっ……」と声を上げて笑いそうになるのを堪えてみせる。
「津川先輩、別れさせ屋みたいですね」
「別れさせ屋ならせめて被害者面くらいさせてほしいなあ!」
津川沙那もまた、私達と同じテニスサークルのメンバーで、かつ、私と同じ法学部だ。
「有り得なくない? なんで沙那本人にその話をするの? でもって『秘密ね』ってなに? 秘密にしろなんて言ってないじゃん! 一言断ってくれてもいいじゃんって言ってるんじゃん! そしてそれを私にわざわざご丁寧に伝える沙那! なにこれ!」