大丈夫、浮気じゃないから。
「いえ、そういうジャンルにはラブシーンがつきものなので、先輩も色々思うところがあったんじゃないかなと思いまして」
この後輩……! マグカップを握る手が震えてしまった。気まずくて話題を振ったのかと思えば、そういうことか……。紘と茉莉は、沙那が帰った後、2人で映画のラブシーンを見た可能性があると言いたいのだろう。
睨みつけるけれど、松隆は頬杖をついて、馬鹿ですねえ、こんな後輩の一言に翻弄されて、とでも言いたげだ。
「……なんのつもり」
「富野先輩と大宮先輩が一緒に見ていたというので、率直な感想ですかね」
「……見たことあるの、『真冬の蜃気楼』」
「ありますよ。だいぶ前ですけど、映画はわりと見ますし」
「……どういう話?」
「主人公の父親が、蜃気楼を見たって手紙を寄越して以来、行方不明になるんです。その父親を捜しに行った主人公が、旅先で出会った若い女性とその蜃気楼の謎を突き止めるために奔走する話ですね。ま、それでその女性と恋に落ちるので、ラブシーンは当然ありますってことです」
「最後の一言、余計だったんだけど」
「なんならこれ終わった後に見てみます?」
「……ホラー映画は無理」
「なんですか、その可愛い設定」
ふ、っと笑った松隆の顔が予想外に──それこそ可愛くて、息を呑んでしまった。それこそ、紘と茉莉の話なんて忘れてしまうほど。
「まあ先輩、あんまり大宮先輩のことを甘やかしすぎないほうがいいですよ」
「……別に、甘やかしてるわけじゃないけどさ」
「部屋に2人の男女なんて、どうなるか分かんないんですから」
「……片方に彼女がいても?」
「女性の先輩にこんなことを言うのは気が引けますけど、男は基本的に隙あらばヤりたい生き物ですから」
……CMが終わったのに、映画の内容は頭に入ってこなかった。
「……松隆、率直な意見を聞きたいんだけど」
「なんですか」
「……二股ってかけれる?」
「……僕がですか?」
もう松隆も映画を見ていなかった。ただ少し困ったように笑う。
「僕はまあ、無理ですね。そんなに器用じゃないです」
「……器用そうだけどな」
「同時に2人以上を好きになるっていうのが、あんまり想像できないですね」
「……そういえば、松隆の初恋っていつなの」
この後輩……! マグカップを握る手が震えてしまった。気まずくて話題を振ったのかと思えば、そういうことか……。紘と茉莉は、沙那が帰った後、2人で映画のラブシーンを見た可能性があると言いたいのだろう。
睨みつけるけれど、松隆は頬杖をついて、馬鹿ですねえ、こんな後輩の一言に翻弄されて、とでも言いたげだ。
「……なんのつもり」
「富野先輩と大宮先輩が一緒に見ていたというので、率直な感想ですかね」
「……見たことあるの、『真冬の蜃気楼』」
「ありますよ。だいぶ前ですけど、映画はわりと見ますし」
「……どういう話?」
「主人公の父親が、蜃気楼を見たって手紙を寄越して以来、行方不明になるんです。その父親を捜しに行った主人公が、旅先で出会った若い女性とその蜃気楼の謎を突き止めるために奔走する話ですね。ま、それでその女性と恋に落ちるので、ラブシーンは当然ありますってことです」
「最後の一言、余計だったんだけど」
「なんならこれ終わった後に見てみます?」
「……ホラー映画は無理」
「なんですか、その可愛い設定」
ふ、っと笑った松隆の顔が予想外に──それこそ可愛くて、息を呑んでしまった。それこそ、紘と茉莉の話なんて忘れてしまうほど。
「まあ先輩、あんまり大宮先輩のことを甘やかしすぎないほうがいいですよ」
「……別に、甘やかしてるわけじゃないけどさ」
「部屋に2人の男女なんて、どうなるか分かんないんですから」
「……片方に彼女がいても?」
「女性の先輩にこんなことを言うのは気が引けますけど、男は基本的に隙あらばヤりたい生き物ですから」
……CMが終わったのに、映画の内容は頭に入ってこなかった。
「……松隆、率直な意見を聞きたいんだけど」
「なんですか」
「……二股ってかけれる?」
「……僕がですか?」
もう松隆も映画を見ていなかった。ただ少し困ったように笑う。
「僕はまあ、無理ですね。そんなに器用じゃないです」
「……器用そうだけどな」
「同時に2人以上を好きになるっていうのが、あんまり想像できないですね」
「……そういえば、松隆の初恋っていつなの」