大丈夫、浮気じゃないから。
「午後じゃない? 午前って大体10時半とかからだし、河原町まで行くのに20分くらいって考えるとちょっと慌ただしい」
「じゃあ昼食べてから行くか。13時10分の回、これは?」
「おっけー。あ、この間ポイントカード作ったから、チケットとっとく」
「さんきゅ」
アイスをかじりながら、スマホ片手に映画館のホームページにアクセスする。紘と映画を見に行くなんて、いつ以来だろう。そもそも、最後にデートしたのはいつだっけ、なんて頭の中にカレンダーを思い浮かべたけれど、後期に入ってからは初デートかもしれない。夏休みの間は、私と紘が入れ違いに帰省したり、紘がサッカーの合宿でいなかったりとあまりまとまった時間はなかったから。
そしてなにより、紘が茉莉と今みたいに仲良くなったきっかけは、サークルの夏合宿だったから──。脳裏には、夏合宿で借りた宿の宴会場の光景が浮かぶ。畳の部屋で、4、5人ずつのグループに分かれて、みんなで好き勝手に駄弁っていたとき、紘と茉莉と、武田と沙那とがひとつのグループになっていて──。
思い出している途中、ぽすっと、背後から抱きしめられた。抱きしめられたというか、紘の体の中に私の体が収まった。もうすっかり慣れたものだから、胸がどきどきすることはない。
ただ、その行為のせいで、脳裏の光景は一瞬で刷新され、昨日、私の部屋にいた松隆の姿が浮かんだ。私に覆いかぶさるように手と膝をつき、怪しい笑みで私を見下ろす後輩の姿が、写真のようにはっきりと浮かぶ。あまりにも生々しい光景に、心なしか脈が速くなった。
紘は、そんな私の動揺に気が付かず、ただ甘えるように私の肩に頭を乗せる。
「……どうしたの?」
なんとか絞り出した声は、辛うじて震えていなかった。
「んー、なんかデートするの久しぶりだなと思って」
「だよね、私も思ってた」頭の中に残っていた光景を振り払おうとするように口を動かして「夏休み、あんまり出かけなかったもんね」
「帰省して合宿2回行ってサークル行ってバイトしてたら終わったからなあ」
「お陰でまだ全然京都に詳しくなってない。この間、お母さんから、そろそろ京都の案内できるようになった? って言われたんだけど、結局清水寺と二条城くらいしか行ってないもん」
「じゃあ昼食べてから行くか。13時10分の回、これは?」
「おっけー。あ、この間ポイントカード作ったから、チケットとっとく」
「さんきゅ」
アイスをかじりながら、スマホ片手に映画館のホームページにアクセスする。紘と映画を見に行くなんて、いつ以来だろう。そもそも、最後にデートしたのはいつだっけ、なんて頭の中にカレンダーを思い浮かべたけれど、後期に入ってからは初デートかもしれない。夏休みの間は、私と紘が入れ違いに帰省したり、紘がサッカーの合宿でいなかったりとあまりまとまった時間はなかったから。
そしてなにより、紘が茉莉と今みたいに仲良くなったきっかけは、サークルの夏合宿だったから──。脳裏には、夏合宿で借りた宿の宴会場の光景が浮かぶ。畳の部屋で、4、5人ずつのグループに分かれて、みんなで好き勝手に駄弁っていたとき、紘と茉莉と、武田と沙那とがひとつのグループになっていて──。
思い出している途中、ぽすっと、背後から抱きしめられた。抱きしめられたというか、紘の体の中に私の体が収まった。もうすっかり慣れたものだから、胸がどきどきすることはない。
ただ、その行為のせいで、脳裏の光景は一瞬で刷新され、昨日、私の部屋にいた松隆の姿が浮かんだ。私に覆いかぶさるように手と膝をつき、怪しい笑みで私を見下ろす後輩の姿が、写真のようにはっきりと浮かぶ。あまりにも生々しい光景に、心なしか脈が速くなった。
紘は、そんな私の動揺に気が付かず、ただ甘えるように私の肩に頭を乗せる。
「……どうしたの?」
なんとか絞り出した声は、辛うじて震えていなかった。
「んー、なんかデートするの久しぶりだなと思って」
「だよね、私も思ってた」頭の中に残っていた光景を振り払おうとするように口を動かして「夏休み、あんまり出かけなかったもんね」
「帰省して合宿2回行ってサークル行ってバイトしてたら終わったからなあ」
「お陰でまだ全然京都に詳しくなってない。この間、お母さんから、そろそろ京都の案内できるようになった? って言われたんだけど、結局清水寺と二条城くらいしか行ってないもん」