大丈夫、浮気じゃないから。
「でしょ。まー、東野は彼女に浮気されて、挙句フラれたことがあったらしいから、そうやって過敏になるのは一種のトラウマというか、仕方ない感じはするけど」
「なんで束縛強くちゃいけないんですか?」
思わぬ角度からの疑問に、思わずキョトンとしてしまった。脳にモーターがついていたら、一時停止していたと思う。
「……なんで?」
「束縛強い恋人なんて世の中にありふれてるじゃないですか、その東野さんしかり」
愚かにもオウム返しした私に、松隆は繰り返す。
「なんで先輩は束縛を強くしちゃだめなんですか?」
「なんでって……束縛、されたくなくない?」
「先輩の彼氏は大宮先輩じゃないですか、僕に聞かれたって困りますよ」
「いや……一般論として」
「さあ、されたい人もいるんじゃないですか?」
「……少なくとも紘はされたくないタイプだと」
「じゃ、先輩は、大宮先輩のために束縛しないってわけですね」
含みのある笑みと声音に、すぐ察しがついた。松隆は「束縛しないのはプライドでは?」と指摘したいのだろう。そしてそれは図星だった。
「……なんだか、今日の松隆、いじわるじゃない?」
「そんなことありませんよ。話は戻りますけど、八城九シリーズの映画は遠慮しときます」
「いじわる!」
「いじわるじゃないでしょ。そんな地獄の映画観賞会に行くのは喜多山先輩くらいだと思いますよ」
確かに、重度のアニオタの喜多山先輩ならメンバーに関わらず二つ返事で了承してくれるだろう。でも喜多山先輩とは特に仲良くないので誘えるはずがない。頼みの綱が切れてしまった。
「ていうか、別に行かなくたっていいんだよなあ」
八城九シリーズだから見ようとは思ったものの、3部作のうち1つが駄作。しかも、残り2作品についても、作者の忍名竜胆は監修を務めるだけ。となれば、残り2部も駄作の可能性は高い。残り2部を見ようか悩んでしまうのは、期待半分、惰性半分だ。
……私が行かないと言ったら、紘は茉莉と2人で行くのだろうか。
「じゃ、行かないって言えばいいんじゃないですか。大宮先輩が富野先輩と2人で行けば──」
「行けば!?」
「僕と2人で映画に行けますよ」
がっくりと肩を落とした。確かに、松隆が協力してくれるのはその限りだ。
「なんで束縛強くちゃいけないんですか?」
思わぬ角度からの疑問に、思わずキョトンとしてしまった。脳にモーターがついていたら、一時停止していたと思う。
「……なんで?」
「束縛強い恋人なんて世の中にありふれてるじゃないですか、その東野さんしかり」
愚かにもオウム返しした私に、松隆は繰り返す。
「なんで先輩は束縛を強くしちゃだめなんですか?」
「なんでって……束縛、されたくなくない?」
「先輩の彼氏は大宮先輩じゃないですか、僕に聞かれたって困りますよ」
「いや……一般論として」
「さあ、されたい人もいるんじゃないですか?」
「……少なくとも紘はされたくないタイプだと」
「じゃ、先輩は、大宮先輩のために束縛しないってわけですね」
含みのある笑みと声音に、すぐ察しがついた。松隆は「束縛しないのはプライドでは?」と指摘したいのだろう。そしてそれは図星だった。
「……なんだか、今日の松隆、いじわるじゃない?」
「そんなことありませんよ。話は戻りますけど、八城九シリーズの映画は遠慮しときます」
「いじわる!」
「いじわるじゃないでしょ。そんな地獄の映画観賞会に行くのは喜多山先輩くらいだと思いますよ」
確かに、重度のアニオタの喜多山先輩ならメンバーに関わらず二つ返事で了承してくれるだろう。でも喜多山先輩とは特に仲良くないので誘えるはずがない。頼みの綱が切れてしまった。
「ていうか、別に行かなくたっていいんだよなあ」
八城九シリーズだから見ようとは思ったものの、3部作のうち1つが駄作。しかも、残り2作品についても、作者の忍名竜胆は監修を務めるだけ。となれば、残り2部も駄作の可能性は高い。残り2部を見ようか悩んでしまうのは、期待半分、惰性半分だ。
……私が行かないと言ったら、紘は茉莉と2人で行くのだろうか。
「じゃ、行かないって言えばいいんじゃないですか。大宮先輩が富野先輩と2人で行けば──」
「行けば!?」
「僕と2人で映画に行けますよ」
がっくりと肩を落とした。確かに、松隆が協力してくれるのはその限りだ。