大丈夫、浮気じゃないから。
「その危険を犯してまでプレゼントを渡しても、それはただのアピールであって、相手の好感度を上げることに繋がるとは限らないと思います。逆に、好意を気付かれても問題がないなら、そもそも誕生日までにそういう仲になるように仕向けます。そう考えると、誕生日にあえて特異なプレゼントを贈る必要はないですよね」

「……なるほど」


 まるで犯行計画を練っているかのように聞こえてしまったけれど、だからこそ納得した。


「じゃあ、紘も何もあげないのかな」

「僕はあげるんじゃないかと踏んでますけど」

「なんで?」

「先輩の彼氏を捕まえて言うのはなんですが、多分大宮先輩はそこまで考えられる人ではないです。大宮先輩はもっと直情的です」

「本当に先輩の彼氏を捕まえて言うセリフじゃないな」


 紘が松隆のことを嫌っているのは理不尽だと思っていたけれど、なんだか納得でき始めてしまった。松隆がこういう目で紘のことを見ていると、紘は気付いているのでは。


「大宮先輩のことだから、あの様子なら富野先輩にプレゼントをあげるのは、まあ、間違いないかなと思います。どの程度のものをあげるかは読めませんけどね」

「……ピアスとかあげてたら」

「白黒以前に気持ち悪いですけどね」

「本当に先輩の彼氏を捕まえて、以下略」


 実際、紘は茉莉になにをあげるのだろう。さすがに、あげてる時点で黒だとまでは言えない気がした。入浴剤とか紅茶ならグレーだろう。


「先輩の誕生日、9月でしたよね」

「うん。9月26日」


 夏休みの最後、松隆を含む5、6人に誕生日会をしてもらった。そのときに貰ったガラス細工の木の置物は、それなりに気に入って大事に飾ってある。ちなみに烏間先輩チョイスで、テーマは「空っぽの木」だそうだ。人の苗字をなんだと思ってるのか。


「……大宮先輩にはなにを貰ったんですか?」

「ネックレス。指輪が2つ重なったみたいになってるやつ」

「ふーん……」

「なに」

「いえ、ただの興味本位です。先輩は僕の誕生日になにをくれるんですか」

「異性に誕生日プレゼントあげると9割方黒なんじゃないの」

「僕は別に誕生日プレゼントをもらったからといって先輩に好意を持たれてると勘違いしませんので」


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