白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

離縁できるまで、あと六日ですわ旦那様。③

「私を放って置いて、ロータスの元に向かうのか?」
「──っ、あのままだと夕食がお誕生日会レベルの豪華さと、ケーキの三段重ねができそうなのですよ!」

 ムスッとしているかと思ったが、ドミニク様の表情筋は動いていない。もはやこれも呪いなのでは? と思ってしまう。そんなことを考えている間に、ぐるりんと視界が回転してガゼボの天井が見える。あれれ? どうして?
 視界が陰ると同時に、プラチナの長い髪が頬に触れ、ドミニク様の顔がすぐ傍に現れた。ひゃう!? 

「君がこんなに近くにいるのに……」

 熱い眼差しに何処か憂いがあった。触れたくても触れられない──というような?
 でも私が触れても、なんとも──。

「……ドミニク様はもしかして、自分から私に触れられないのですか? その、呪い的な効果で」
【──っ、その通りだ。妻が傍にいるのに自分から抱きつくことも、キスもできないなんて……。そもそも本来の姿は嫌われると思っていたから、こんな夢のような展開は……ハッ、途中からこれは夢だったとしたら納得がいく!】

 いや納得しないでほしい。ドミニク様が私の頬に触れようとするが、目に見えない何かに遮られてしまい、拳を握って目を伏せた。

【夢だったら妻に触れられて、名前を呼べるようになるぐらいのサービスがほしい! ハグしたい、キスしたい! 妻の名前を呼びたい! 愛しているって!! ずっと傍にいて支えて欲しい。一緒に旅行にも、思い出も作りたいし、もっと妻との時間を取りたい!】

 ううっ。唐突な愛の告白はこっちの心臓にもくるから! こっちまで十六ビートを刻むような心音がバクバクしてしまったじゃない!
 私に触れられないだけじゃなくて、名前も呼べない? 愛も囁けない?
 一つの呪いに込められる制約は確か一つだったはず。『不幸になれ』などの抽象的なものは、効きにくい。逆に特定の制限をかける呪いは効果が高いのだ。特に恋愛関係などはその呪いのレパートリーがものすごく多い。恋は人を狂わすというけれど、ドミニク様呪われすぎじゃない!?

 ……ん? 私からなら触れ合えるのよね。ふとそのことに気づいて、ドミニク様の頬に手を当てた。不可視のなにかに拒まれることはなかった。ヒンヤリとしているが、スベスベだ。
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