白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
「──っ、怖くないのか? 異形種だぞ?」
「あら、神獣の始祖返りは名誉なことと聞きましたわよ。それに私はどうやらこの姿のドミニク様も魅力的だと思いますわ」
「み、魅力? 私の姿を見て目が可笑しくなってしまったのだな。すまない」
そう口では言っているけれど、私の手に掌を重ねてきた。私から触れた場合は、ドミニク様も触れられるようになるのね。
手が重なり合うと温かくなる。私のことを少なからず好意的に思っているのが、なんだか嬉しい。キュンキュンしてしまうのは、ここ数年夫婦でありながら甘い感じがなかったからだと思う。それに……どうやら私はドミニク様の熱のこもった眼差しに弱いようだ。
「ドミニク様。ドミニク様にも複雑な事情があるのは理解しましたが、どうして打ち明けていただけなかったのですか? 方法なら直接でなくとも手紙に……」
「手紙に呪われていることを書き記した途端、爆破した」
「爆……なるほど。本来の姿を見せて拒絶されるぐらいなら……という思考回路に至ったのですね」
「……そうだ。少なくとも……それであれば君を繋ぎ止められるし、傍にいてくれると……先延ばしにしていたのだ」
絞り出す声に胸がチクリと痛んだ。
「離縁……の件は後回しにするとして、まずはドミニク様の呪いを解くのに協力しましょう」
「離縁はしたくない……しない」
頑なな態度に、クスリと口元が綻んでしまった。
意地っ張りな方だわ。でもドミニク様のお心に触れられてよかった。……離縁したい気持ちはまだあるけれど、今はドミニク様の回復が先ね。解呪で最も有名なのは、やっぱりアレ。物語でもこの世界でもお決まりの解決方法!
つまりキス!
「ドミニク様。呪いを解く──可能性のある方法を試してもいいですか?」
「え、あ、ああ」
若干と言うかかなりハードルが高いけれど、愛する者からのキスの効果は絶大。特にこの世界では呪いよりも愛の思いが勝る。と言うことなので、いざ!
そう思って勢いを付けたのが不味かった。
「!」
「!?」
ゴチン──。気合いを入れすぎて起き上がったため双方の額がぶつかり合う。痛いし、すっごく恥ずかしい!
「すまない」
「私の方こそすみません。……目測を誤りました」
【目測? 急になぜ起きあがろうと? いや私の顔に向かって何かしようと? 呪いを解くとも言っていたな。まさか私にキ……イヤイヤイヤイヤそんなはずはない。そんな都合のいいことなど……】
もう雰囲気とか関係ない。とにかく今の勢いを逃したら、次はもっとハードルが高くなるもの。幸いにもお互いに座った状態になっている。自分から寄り添って密着してからの──キス。
ちょっと唇からずれたのでもう一度唇に触れた。柔らかい感触にドキッとする。
ぼふん!! と先ほどの倍以上もある爆発音と共にドミニク様の容姿が変化した。
チマっとした白銀の子竜が私の腕の中にいる。しかも旦那様の服は宙を舞い、ガゼボ周辺に脱ぎ捨てたかのように落ちた。