白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
「ドミニク様?」
「きゅう」
「はう!」
小首を傾げる姿は反則的だわ!
ドミニク様は状況を理解していないのか、目を白黒させてちょこんと座っている。ああ、そんな姿をされたらギュッと抱きしめたくなるのは、しょうがないわ!
【つ、妻からいい匂いがする。近い……あわわわわ! 妻に抱きしめめめめ……】
「なんて可愛らしいのかしら! これは……呪いが解けたから子竜になったのか、新たに呪いは増えたからこうなったのか……」
「きゅうきゅう」
ごめんなさい。何を言っているのか全然分かりませんわ。ここは全力で心の声を待った。
【フランカ、ああ、フランカ、フランカ!! 信じられない。妻の名前が呼べる! やっと名前を口にできたのに、どうして獣型に……!】
「ドミニク様もう一度キスをしてみたら、別の呪いが解けるかもしれませんわ」
「きゅう!」
口元が緩みそうになるのを必死で堪え、いかにも呪いを解くためだと真剣な口調でドミニク様に伝える。決して小竜が可愛くて、頬ずりや頬にキスをして触れ合いたい訳ではない!
【フランカとまたキス! 抱き上げられたまま、しかもよりによって幼獣姿なのは格好がつかないが、それでもフランカに愛されているかもしれないと思うと嬉しい。私はもっと早くフランカと言葉を交わして、愛を囁いていたら……いや……今更だ】
小竜だからか、とても表情が豊かで今も喜んだと思ったら凹んで尻尾が特に分かり易い。そんな表情一つ一つがキュンとしてしまい、ぎゅうぎゅうにドミニク様──小竜を抱きしめる。
「まあ、喜んでいたのにまたすぐに凹んでしまったのですか? 夫婦はお互いに支え合っていくのですから、恰好の悪い姿を見せて弱みを晒してもいいのですよ」
「きゅう」
三度目のキスをした後、ドミニク様からも私に触れられるようになり、ボフン、と再び音が鳴った時には人の姿に戻っていた。全裸だったけど、煙で胸板がぼんやり見えた程度で済んでよかったわ。
そうそこまではよかったのだが、問題はこの後のドミニク様からの──ハグとキスの嵐という、ドミニク様の愛情の深さを思い知ることなるのだった。