白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
離縁できるまで、あと六日ですわ旦那様。④
「ああ、やっと……フランカ、貴女に触れられる。愛している、君だけをずっと」
「ひゃう……」
砂糖を食べているような甘さ。この調子でずっと私を口説きに来ている! 言葉数少ないって嘘だった! 嘘つき!
私を膝の上に乗せて、ドミニク様は微かに口元を緩めた。表情が崩れた姿にキュンキュンしちゃう。あんなに眼光が鋭かったのに、今では甘い視線を送ってくる。別人って言いたい。
「ドミニク様、呪いの数が異常なことに関して調査はしているのですか?」
「もちろんだ。調査の結果、呪いをかけたのは魔女ではなく貴族のご令嬢たち四十六人だと判明した。愛している、フランカ」
「愛……。それは……旦那様が火遊びをしたからではなく?」
「私はフランカ一筋だ。浮気はしてない。それに呪いのターゲットは私ではなく、王太子殿下だ。何故か財務課──私の席の近くに置いてあった。……それもフランカが贈ってきそうな便箋や小包なので、つい。好きだ、フランカ」
語尾に愛の言葉を呟く呪いにでもかかったみたいだわ。脈略とか関係なく言ってくるから反応に困る。
「……私の」
呪いが悪化した間接的な原因って、私なんじゃ? 私からの贈り物で喜んだドミニク様はさぞ落ち込んだはずだわ。呪われたことにも気づいていないなんて……妻失格よね。
「フランカ、悲しい顔をしないでほしい。……とても愛している」
「──っ」
落ち込む私にドミニク様は頬にキスをして、気を紛らわせようとしてくれる。少し前まで心の中の声が凄かったのが嘘のように自然にキスをしてくる。て、手慣れていらっしゃる!?
【はーーー。フランカが可愛い。好きだ。触れたらもっと好きになった。傍にいるだけでも幸せだったのに、キスも抱擁も、最高だ。フランカ好きだ、愛している! フランカ、フランカフランカフランカ】
赤裸々すぎる!
名前で絶賛愛を叫んでいるし、聞いているこっちが恥ずかしいわ!
思わず両手で顔を覆っていると、頭にキスをしてくる殿方は本当に旦那様なのでしょうか!? 別人なのだけれど! ……ううん、本当はずっとこうしていたかったのかもしれないわよね。呪いと始祖返りと繁忙期がなければ……。
「その……王太子を呪ったご令嬢たちからは、何か聞き出せたのですか?」
「ああ。ご令嬢の間では呪いではなく、『恋愛成就のまじない』として広まっていたので、軽い気持ちで試したとか。まさか呪いだとは思っていなかったようだ」
「『恋愛成就のおまじない』……そういえば学院でも流行っていましたわ」
「……フランカも誰かに贈ったのか?」
穴が開くほど見つめないで欲しい。そして隙を見つけてはキスするのも!
「フランカ?」
「(甘い声を耳元で囁かないで!)わ、私は誰にも贈っていませんわ! 夢や願いは自分で叶えるものですもの!」
「照れた君も可愛いな」
「はうう」
怒涛の溺愛ぶりに私のライフポイントはゼロだわ……。は、早く話題を戻さないとキュン死してしまう!