白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
離縁できるまで、あと三日ですわ旦那様。
翌日。いつものように朝食を食べた後、旦那様は執務室で仕事をこなし、私は傍の簡易机でプレゼン資料とレシピ作りに勤しんでいる。プレゼン資料は昨日のうちにある程度できているので、あとは推敲するぐらいだ。
レシピ作りは結構楽しくて夢が広がるばかりで、オープン用のスイーツを厳選するのが難しい。贅沢な悩みだけれど。
ふと旦那様の仕事姿を見たら超スピードで書類を確認、サインを繰り返していた。しかもしっかりと赤ペンで問題事項は丸を付けつつ、コメントを残している。有能すぎません?
白銀の長い髪が微かに揺らぎ、眼鏡をかけた姿は貴重かつ美しい。姿勢も良いのよね!
うっとりしていると、私の視線に気付いたのか書類から目を逸らして目が合った。口元がもしかしたら数ミリほど吊り上がったかもしれないが、実際は無表情だ。もっとも尻尾がそれを補うぐらいにパタパタと動いているので、間違いなく上機嫌だわ。
「フランカ、なにか気になることでも?」
「仕事をしている旦那様が格好いいなと見惚れていただけですわ」
「そうか──私にみ──っ!?」
相当嬉しかったのか、ブンブンブンと激しく尻尾が揺れて床を叩いた。痛くないのかしら?
今日もロータスから付けて貰ったブレスレットを着けているけれど、心の声は聞こえてこない。あれは一時的なものだったのかしら?
あの時の私たちには必要だったものだけれど、今は心の声が聞こえなくても意思疎通ができている。落ち着いたら、どういうことだったのかロータスに聞いてみましょう。
ほんわかしたことがありつつ、お昼を一緒にとって午後は中庭でのんびり過ごす。私はレシピ本で、旦那様は旅行雑誌を見ている。付箋がたくさん貼っていてびっくりした。私と一緒に行きたいところがたくさんあると言ってくれて、また胸がキュンキュンする。
どんどん旦那様の素敵な所を見つけて、好きになっていくわ。
「オーロラが見られる北の魔法都市もいいし、一年に一度しか咲かない桃色の大樹を見に行くのも面白くないか?」
「まあ、素敵な町並み。あ、旦那様。ここの場所だと中々手に入らない紅茶があるみたいですよ。こっちは桃色の大樹の花びらを使ったスイーツが人気で、夫婦や恋人が食べると永遠の愛を得られるとか言い伝えがあるんです」
「絶対にいこう」
「ふふっ、はい」
次々に約束ができて、お互いの興味や関心のあるものが分かっていく。旦那様は緻密なガラス細工が結構好きで、美術館や雑貨店を巡るのが好きらしい。それは私も知らなかったので、「じゃあ次の誕生日は旦那様の好きな物を贈りますね」と言ったら、嬉し泣きしてしまった。それにつられて私もちょっとだけ涙ぐんだのは秘密だ。
庭でのお喋りはとても楽しくて、また昼下がりにお茶をしましょうと旦那様と『次』の約束を取り付ける。そうやって積み重ねていこう。
食休みも終わってから、一緒に手を繋いで厨房に向かった。旦那様が厨房に入るのは初めてだったようで、使用人や料理人たちは涙ぐんでいた。思えば最初から屋敷の人たちは優しかったわ。使用人たちはほとんど私たちより年配で、親子ほどの歳が離れていて、旦那様のことを大事にしているのが伝わってくる。
私は動きやすい侍女服に似た恰好に着替えて、自前のエプロンを着ける。その姿に旦那様は目を細めた。
レシピ作りは結構楽しくて夢が広がるばかりで、オープン用のスイーツを厳選するのが難しい。贅沢な悩みだけれど。
ふと旦那様の仕事姿を見たら超スピードで書類を確認、サインを繰り返していた。しかもしっかりと赤ペンで問題事項は丸を付けつつ、コメントを残している。有能すぎません?
白銀の長い髪が微かに揺らぎ、眼鏡をかけた姿は貴重かつ美しい。姿勢も良いのよね!
うっとりしていると、私の視線に気付いたのか書類から目を逸らして目が合った。口元がもしかしたら数ミリほど吊り上がったかもしれないが、実際は無表情だ。もっとも尻尾がそれを補うぐらいにパタパタと動いているので、間違いなく上機嫌だわ。
「フランカ、なにか気になることでも?」
「仕事をしている旦那様が格好いいなと見惚れていただけですわ」
「そうか──私にみ──っ!?」
相当嬉しかったのか、ブンブンブンと激しく尻尾が揺れて床を叩いた。痛くないのかしら?
今日もロータスから付けて貰ったブレスレットを着けているけれど、心の声は聞こえてこない。あれは一時的なものだったのかしら?
あの時の私たちには必要だったものだけれど、今は心の声が聞こえなくても意思疎通ができている。落ち着いたら、どういうことだったのかロータスに聞いてみましょう。
ほんわかしたことがありつつ、お昼を一緒にとって午後は中庭でのんびり過ごす。私はレシピ本で、旦那様は旅行雑誌を見ている。付箋がたくさん貼っていてびっくりした。私と一緒に行きたいところがたくさんあると言ってくれて、また胸がキュンキュンする。
どんどん旦那様の素敵な所を見つけて、好きになっていくわ。
「オーロラが見られる北の魔法都市もいいし、一年に一度しか咲かない桃色の大樹を見に行くのも面白くないか?」
「まあ、素敵な町並み。あ、旦那様。ここの場所だと中々手に入らない紅茶があるみたいですよ。こっちは桃色の大樹の花びらを使ったスイーツが人気で、夫婦や恋人が食べると永遠の愛を得られるとか言い伝えがあるんです」
「絶対にいこう」
「ふふっ、はい」
次々に約束ができて、お互いの興味や関心のあるものが分かっていく。旦那様は緻密なガラス細工が結構好きで、美術館や雑貨店を巡るのが好きらしい。それは私も知らなかったので、「じゃあ次の誕生日は旦那様の好きな物を贈りますね」と言ったら、嬉し泣きしてしまった。それにつられて私もちょっとだけ涙ぐんだのは秘密だ。
庭でのお喋りはとても楽しくて、また昼下がりにお茶をしましょうと旦那様と『次』の約束を取り付ける。そうやって積み重ねていこう。
食休みも終わってから、一緒に手を繋いで厨房に向かった。旦那様が厨房に入るのは初めてだったようで、使用人や料理人たちは涙ぐんでいた。思えば最初から屋敷の人たちは優しかったわ。使用人たちはほとんど私たちより年配で、親子ほどの歳が離れていて、旦那様のことを大事にしているのが伝わってくる。
私は動きやすい侍女服に似た恰好に着替えて、自前のエプロンを着ける。その姿に旦那様は目を細めた。