白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
瞳孔を開いている上に、旦那様の低い声によってその場が一瞬で凍り付いた。傍に控えていた使用人たちも、背筋に凍るような寒気を感じたようだった。
「……フランカ、もしかして以前から王城にスイーツを届けてくれていたのか?」
「はい。日持ちするクッキーやマフィン、フィナンシェとかですが……」
私もハッとなって嫌な予感がした。呪いの件で王城がピリピリしていた頃でもあったのだろう。
「月にどのくらいで、いつから?」
「え、ええっと……。一年ぐらい前から、だいたい月に一度の頻度でしたが……」
「スイーツはロータスが届けたのか?」
「ええ」
「ロータス」
「はい。私が責任を持って届けましたが、旦那様が不在と言われたため財務課のカストという部下の方にお渡ししました」
「カスト……。カスト・フォルジュか。ああ、なるほど」
旦那様の顔が険しくなっていく。部屋の空気が一気に氷点下になりそうだったので、旦那様のギュッと抱きついた。
「旦那様、殺気を抑えてください」
「あ。すまない」
「イライラした時は甘い物が一番なのですよ」
「もぐっ…………ん、幸せの味がする」
「じゃあ、私にもお裾分けしてください」
そう言ったら旦那様から唇にキスをされた。違う、私はブラウニーをたべさせてほしかったのだ。そう思ったのだけれど、旦那様とのキスはとても甘くて、たしかに幸せの味がした。だから私に魔の手が忍び寄っているなんてことに、まったく気付いていなかったのだ。