白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

離縁できるまで、あと二日ですわ旦那様。①

 今日は旦那様と離縁についての話し合いが行われる。といっても昼間は慈善活動の一環として、修道院への訪問とバザーの手伝いを行うので、夕食後になるけれど。領地内での慈善活動全般は、公爵夫人の仕事の一つだ。
 季節ごとに行うバザーは修道院にとって大事な収入源でもあり、班ごとに出し物を考えてもらい一番売上げを出した班には、賞与を与えるようにしている。これが効果的で班の子供やシスターたち同士の結束力が強くなり、以前よりも売上げが右肩上がりになった。優秀賞とは別に努力賞やアイディア賞も設けているので、どの部門を狙うのかも楽しみになっているとか。

 馬車に乗りながら、屋敷でのことを思い返す。
 予定が合えば旦那様も同席すると言ってくれたけれど、昨日の夜から部下の人が出入りしてバタバタしていたし、朝食時にはこの世の終わりのような顔で「すまない。一緒に同行できなくなったが、絶対に後から向かう」と言ってきたものね。

 私的には後から来てくれるというので嬉しいんだけれど……。「離れたくない」と旦那様が駄々をこね、お見送りをするまで凄く大変だったわ。それだけ私と一緒に居たいって思ってくれている……。うう……嬉しいけれど、恥ずかしいわ。
 ほんの少し前までは一緒に朝食を共にすることぐらいしか接点はなかった。旦那様のよくない噂もお茶会で耳にしていたけれど、今思えば噂を旦那様に確認しようとしなかったわ。噂が本当で傷つくのを避けていたのも、よくなかったのよね。
 今の旦那様となら、この先も一緒に……。
 そう思うと頬に熱が籠もる。


 ***


 修道院に到着するとバザーの準備はできていて、あとは商品を並べるだけのようだった。スープや菓子の香りが充満していて、今からワクワクした気持ちでいっぱいになる。

「これはオーケシュトレーム公爵夫人」

 声をかけてきたのは、恰幅のよい初老の紳士だった。彼を見て口元が綻ぶ。

「院長、お久しぶりです。私の家からは小物の刺繍やクッキーを用意しましたの。売上げは集計して頂き、寄付という形にしてください」
「はい。いつもありがとうございます。クッキーはもし余りましたら……」
「ええ、子供たちに差し上げて──と言いたいところだけれど、彼らの分は別で用意しているから全部売ってしまっても問題ないわ」
「何から何まで……。ありがとうございます。毎年、奥様の用意した菓子を大量に買う御仁がいましたのでありがたいことです」
「まあ、そんな方が?」
「慈悲深い方がいらっしゃるのね」
「ええ」

 使用人たちにも手伝って貰っているので、私一人で作ったわけではないけれど、好評というのなら嬉しい。そういえば旦那様に私が手伝っているとは話したけれど、作っているって言ってなかったわね……。事後報告になってしまうけれど、一応共有はしておきましょう。
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