白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
「ささ、子供たちも貴女様が来るのを楽しみにしておりますで、こちらにどうぞ」
「そうね」
院長もウキウキでバザーの会場を案内してくれた。いくつか慈善活動で修道院を訪れているが、ここの院長は教育熱心で子供たちからも好かれている。元は子爵家の次男だったとか。
「今日は親戚にも声をかけまして出入りが激しいですが、関係者は黒の腕章を付けております」
「そうなのね。年々、盛大にバザーができるようになって私も嬉しいわ」
私が嫁いだ頃はバザーを開いても品揃えや質はあまり高くはなかったし、援助額も最低限だった。そこから子供たちが手に職をつけることで将来の選択肢を増やせないかと、院長と話し合ったところから始まったのだ。懐かしい。
孤児院の子達が刺繍や読み書きを覚えて、バザーに出す品揃えのクオリティーも上がった……。離縁後は個人的に寄付をしようと考えていたのが、なんだか昔のように感じるわ。
冷え切った新婚生活の中で、慈善活動は心穏やかに過ごせる拠り所だった。ここがあったから三年間と割切って公爵夫人としてやってこれた。
それにここでスイーツ作りを披露したことで、パティシエの道を諦めたくないと思ったもの。でも今日の夜の話し合いが上手くいったら、公爵夫人として旦那様の隣に居られる。それが今は誇らしくて、嬉しい。
バザーの開催場所となる広場を院長に案内してもらい、侍女を連れて班を見て回った。みな今日を楽しみにしていたのだろう。子供たちは元気いっぱいで、自然と口元が緩む。
開催まで後一時間。最終調整でバタバタしているのを横目に、私も何か手伝ったほうがいいかと考えていると──。
「フランカ」
「──っ、お父様、お母様!」
懐かしい声に振り返ると、両親が馬車から降りた所だった。三年ぶりの再会に、思わず母に抱きついてしまった。淑女としてはしたなかったけれど母は窘めることなく、抱きしめ返してくれた。父は私と母ごと抱きしめる。
「三年でますます綺麗になったわね」
「そう、かしら」
「元気そうでなによりだ」
「お父様……」
「もう、ドミニク様は定期的に手紙をくださるのに、娘の貴女は手紙一つ寄越さないのだから」
「あ、それは……」
両親に手紙を書いたら新婚生活が上手くいっていないことを書いてしまいそうで、筆が進まなかったのだ。今思えば私は誰にも相談できずに、一人で考え込んでしまっていた。
政略結婚では夫婦間に愛情がなくても、機能していればいい。そういう考えが根本的にあったからだ。
「アナタ。うちとは違って公爵夫人として覚えることがたくさんあるのです。そうフランカを責めないであげてくださいませ。それに私と同じくドミニク様からの求婚からの──恋愛結婚なのですから、夫婦の時間を持ちたいのは当然でしょう」
「まあ、そうだな」
え。ドミニク様との結婚は王命によるもの──政略結婚ではなかったのか。
「お父様、お母様。ドミニク様との結婚は──」
「火事だ!」
「煙が修道院内から出ているぞ!」