白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

離縁できますわ、旦那様。

 次に目を覚ましたら全てが終わっていた。私は一日以上眠っていたらしく、ベッドの上で目を覚ました。傍にいた旦那様が甲斐甲斐しく世話をしてくれて、水分補給をしてから、ポツポツと詳細を話してくれた。

 呪いの一件から修道院のボヤ騒ぎも全て第三王子の傍付きであるアッシュ・フォルジュが企てたことだったと判明した。そして間接的に旦那様に呪いを送っていたのも、あらぬ噂を流したことも、第一騎士団を買収して帝国に連れて行こうとしたのも全て、彼が仕組んだのだという。

「旦那様と接点があったことも驚きですが、そのアッシュの動機はなんだったのです?」

 旦那様に剥いて貰った林檎をシャリシャリと食べながら何気なく聞いたのだけれど、旦那様の纏っている空気が氷点下まで一気に下がった。よっぽど腹立たしいことがあったのか、黒いオーラが見える。効果音を付けるのなら、ゴゴゴゴゴッ!! あるいはボオオオオ! と燃えさかる感じだろうか。

「狙いはフランカ。君だ」
「……ふぁい? え? 旦那様の地位を狙ったとか政敵とか陰謀なんかじゃなく……?」
「学院時代から君を好いていたらしい。だからこそ裏で一癖も二癖もある貴族たちに後妻を薦めて、求婚に困っている君を助ける形で婚約しようと動いていたらしい。そのあたりは第三王子のコネを良いように利用した」
「じゃあ、旦那様が呪われた原因って……私のせい……」

 私が旦那様と結婚しなかったら、複数の呪いを受けることもなかった。旦那様はずっと被害者で、私が加害者だったなんて。

「旦那様。すみません、私のせいで──」
「違う。フランカは巻き込まれた被害者だ。そもそもアッシュは君と恋仲だと勝手に思い込んでいて、現実と妄想の区別が付いていなかった。学院卒業後に私との婚約と電撃結婚を知ってから箍が外れたのだろう。第三王子にとってアッシュは乳兄弟の関係で、言動がおかしくなっているアッシュの入院を勧めていたらしいが激しく拒否したため、領地で静養させていたそうだ」
「……その後、行方不明に?」
「ああ。行方を眩まして帝国に亡命した。元々魔導書の入手も帝国の店で購入したようだ。知識や闇ギルドの伝手もそこで得たのだろう」
「アッシュ様の勘違い……」
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