白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

 ガゼボに座って居る姿は姿勢良く、凜としていた。しかし心の中は後悔の嵐が吹き荒れている。にわかには本人の心内とは思えない。

【ああ……。一つの出来事自体はたいしたことがないが、さまざまな要因が重なって今に至るのは事実。やっぱり最初の出会いから間違えたのだろうな。見合い、デートを重ねて、恋人としてプロポーズをしていたら、今とは違った関係を築けたのでは? いいや、今さらだ。あの時は他の貴族からの縁談話がいくつも舞い込み、しかも彼女よりもずっと年上の後妻ばかり! あんな天使で可愛らしい彼女を守るために権限を使って潰しても、際限なく求婚者が湧くので陛下に打診して……私の妻に! だというのにぃいいい! その矢先に()()が発症するし、決算繁忙期になるわ、部下の横領は見つかるは、王太子の代わりに呪いを受けるわで散々だった…………。それでも妻がいたから……頑張れたし、でも……ああ……もっと彼女と話す時間を作っていたら……あのことも、もっと早く……勇気を出していれば】

 なんだか教会の懺悔室みたいな独白になってきたような?
 というか初耳なことが多すぎる……。
 縁談?
 さらっと天使とか……。
 聞いているだけでツッコミどころが多すぎる。心の声、言葉の大洪水が起こっているのだけれど……。このままでは、永遠に旦那様の独白を聞き続けるだけで一日が終わってしまうわ。ううん、もう旦那様じゃなくなるのだから、呼び方は──。

()()()()()
「!?」

 凄まじい睨みと圧に耐える。眼光の鋭さに卒倒しないでいた私を誰でも良いから至急褒めて欲しいわ!! 正直、怖い! 裸足で逃げたい!!

「来たか。……座ってくれ」
「……はい」

 沈黙。
 重苦しい空気に私の心は折れかけそうになる。先ほどの頭に入ってきた言葉は幻聴……よね。うん。だって今、隣にいて何も聞こえな──。

【ああああああああああああああーーーー、なんで素っ気ない言葉を! でも妻が私の名前を呼んでくれた! 心臓がバクバクしすぎて幸福死するんじゃ? まだ希望はあるのだろうか? いや『旦那様』呼びも捨てがたかったが! 妻が可愛い!! ちょこんと座って、どうしよう心臓の爆音が彼女に伝わって幻滅されたらどうしよう? ああ、ああああああーーーーでも、うちの嫁超かわいい! 好き、どうしよう可愛すぎるぅうう──って、違う!! このまま黙っていたら彼女がこの屋敷から去ってしまう!!】
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