白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

離縁できるまで、あと六日ですわ旦那様。②

 えええええー!? 確定事項にした!!
 心の中では有給を取得するとか言っていたのに! 今も絶賛、どん引きするような心の声が聞こえてくる。その中にはちょいちょい気になるワードが出てきた。

「そ、早期解決であれば、離縁のほうが手っ取り早いのでは?」
「……先ほども言ったが、離縁は認めない。白い結婚を盾に離縁をするのなら、その条件をクリアできなくするまで」
「──っ、それは……」

 つまり無理やり抱くということよね?
 思わず身構えた瞬間。

【ああああああああああああああーーーーー。何言っているんだぁあああ。それじゃあ、離縁したくないから抱くみたいじゃないか! 抱きたいのはやまやまだし、なんなら初夜だってやり直したいいいいいい! いややり直そうにも、そもそも呪われているから無理なんだけれども!!】

 ()()
 そういえば()()の発症って、さっきも言っていたような?
 この世界において魔法や呪いは身近にある。そして割と簡単に呪われてしまったりする。気まぐれな魔女様は退屈凌ぎに、恋愛関係の呪いを無差別に振りまくとか。もしかしなくても、ドミニク様が?
 でも魔女に呪いがかかっているなら普通は協力を仰ぐし、相談するような?

「ドミニク様。私に隠し事をしているようなら、今すぐに話してください。後妻様のことも」
【後妻なんていないのに……。俺は妻一筋……信じてもらえないのは……今までの行いのせいか……】
「何も話さないのなら、言い方を変えます。……繁華街に出入りしているのは、お気に入りの娼婦と会うためではないのですか?」
「!」

 私の言葉にドミニク様はキッと眉を吊り上げて睨んできた。
 威圧が半端ない。もし心の声が聞こえない状態だったら、身が竦んで目を合わせ続けるのは難しかったかもしれない。だって背景にズゴゴゴゴ! とかラスボスの放つようなオーラが出ているんだもの!

「あれは魔女を追っていたからだ」
「(やっぱり魔女!)……もしかして何か薬を探していたのですか? それとも魔女関係で困りごとが?」
「………………呪いを解除する方法を、探していた」
「まあ! 呪いに……。旦那様はどうして呪われてしまったのですか? 政敵からの攻撃ですか?」

 魔女様を捜し回るなら、城下町よりも繫華街のほうが情報は回ってくる。ということは、旦那様に女の影はない?
 ちょっとだけホッとしたような気持ちになったので、その程度で離縁を反故にはしないと姿勢を保つ。さあ、どんな言い訳が頭の中で繰り広げられているのかしら。

【い、言えない! 王太子の馬鹿に届いた手紙が私の机にあったので、不用心にも封筒に触れた──なんて!! 『もしかしたら妻かな?』なんてうっかり喜んでいた私の馬鹿!! 仕方ないじゃないか。決算繁忙期で忙しかった上に横領が次々に出てきて、それらの対応が重なって……三徹だったんだから……】

 なっ……なによ、それ。
 思ったよりも可愛い理由で呪われたの!? わ、私の手紙を浮かれていたなんて……。べ、別に嬉しくなんかないわ。今さらよ。……そう言えば二年前から財務で不祥事があったからと、王城に寝泊まりしていたわ。それに何度か夫に手紙を送っていた……。だから気が抜けて手紙に触れてしまった?
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