極道に過ぎた、LOVE STORY
私が私になるまで……
 「さっちゃん、おにごっこしよう!」

 「うん。みゆきちゃんじゃんけんしよう」

 「いいよ」


 「みゆきー。そろそろ帰るわよ」

 おにごっこをしようと砂場から立ちあがった私たちに、みゆきちゃんのママの声が響いた。少しオレンジ色に染まりかけた公園に、よくある光景だ。

 「あら、幸ちゃんと遊んでいたのね」

 ほんの少しだが、みゆきちゃんのママの声が震えたように思えた。

 「うん。これからおにごっこしようと思ったのに」

 みゆきちゃんは、頬を膨らませた。

 「あら、残念だったわね。でも、夕ご飯の支度しなくちゃね。幸ちゃん、また遊んでね」

 みゆきちゃんのママはそう言って、みゆきちゃんの手を握った。


 でも、みゆきちゃんが私と公園で遊ぶ事は二度となかった。



 そろそろ帰る時間だ。公園の時計に目を向けると、学校で習った時間が読めるようになっていた。短い針が六、長い針が十二。

 「お嬢、そろそろお帰りの時間です」

 立ち上がると、そこには黒いスーツ姿の男が立っていた。みゆきちゃんや他の子達のように、ママやパパが迎えにくることはない。

 気付けば、子供達の姿も、ベンチでお話ししていた母親達の姿も無くなっていた。


 「うん」


 私は頷くと、公園の外に停まっている黒い大きな車に向かって歩き出した。
 その後ろを、黒い服の男が歩く。
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