極道に過ぎた、LOVE STORY
 今日は、パパが帰ってくる日だ。家の中も、いつもより緊張と活気がある。

 「パパ、おかえりなさい」

 「おお、幸。変わった事はないか?」

 「うん。特にないよ。でも、相談したい事があるの」

 「分かった。お茶でも飲もう」

 すると、近くにいた若い男が、急いでキッチンへと向かって行った。


 リビングのソファーに、パパと向き合って座った。

 「相談とは?」

 「進路の事なのだけど。出来れば、大学には行きたいと思っているの」

 「ああ。パパも賛成だ」

 反対はされないとは思っていたが、賛成と言われた事で、気持ちが楽になった。

 「ありがとう。でも、具体的に決められなくて」

 「そうか。成績も良いと羽柴から聞いている。その気になれば、どこでも入れるんじゃないか?」

 「ねえ、パパ」

 意を決して、パパの顔を見た。

 「どうした?」

 「四代目はどうなるの?」

 パパはゆっくりと、お茶の入った湯呑みを口に運んだ。


 「そうだな。幸は、どうしたい?」

 「どうしたいかなんて…… 何もこの世界の事も、パパが何をしているかも分からないのに、決める事なんてできない」

 「良かった。幸が安易に自分の事を決めてしまう娘じゃなくて。これから、色々知っていく中で考えればいい。今は自分のやりたい事をやりなさい。その後からでも、四代目にはなれるし、ならなくてもいい」

 「パパ。そんな考えでいいの?」

 「ああ。今はいい。パパもまだ若いんだから、やらなればならない事がたくさんあるんだ。勝手に引退させないでくれ」

 「もー。そう言う事じゃないよ」

 パパが、ふっと笑う。皺が少し深くなったが、カッコ良さは変わっていない。

 「ただ、いいか幸。四代目の事は、勝手に口にするんじゃないぞ」

 パパの目が鋭く光る。

 絶対にこの約束は守らなければならない事なのだ。私は大きく頷いた。
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