極道に過ぎた、LOVE STORY
出会いになるまで
 高校卒業後、私は家から通える大学の医学部に進んだ。家から離れる事も考えたが、何処に行っても、轟川の娘である事には変わりない。それなら、いっそ知られているままの方が、手間が省けて楽だと思った。難関と呼ばれる大学であったが、無事にストレートで合格する事が出来た。

 医者になる、その選択肢が正しかったのかは分からないが、医療と言うもが自分の中でストンと落ちた感じだった。きっと何かの役に立つ、そんな気がした。
 でも、私が医者になることは簡単な事ではない。今までより、大きな問題が起きる事は覚悟していた。


 『おめでとう、幸。頑張ったわね』

 パソコンの画面のママが嬉しそうな声を上げてくれた。ママとは、画面越しにしか会ってない。

 「大学に受かっただけだからね。これから大変よ」

 画面に向かって言った。

 『いいのよ。まずは、スタートに立てたのだから。誰でも出来る事じゃないのよ。これから、大変な事もあると思うけど、自分のやりたいと思った事をしっかりやりなさい』

 「はい。ママ、会いたいな」

 「ママも、幸に会いたい。必ず、会える時が来るわ」

 パパとママが離婚していた事を聞いたのは、つい最近だ。何か、深い事情があるのだと思うから、敢えて理由は聞かなかった。
 ママが何処にいるのか分からないが、必ず、連絡はくれていた。


 特に目立つことはせず、大学に通い始めて三年が過ぎた。私の噂は、予想通り周りの反応を変える。でも、特に問題はなかった。
 だが、危険というものは、私の周りだけで起きているわけではないのだ。学生の間でも出回っているドラック。詐欺に加担してしまう者。そんな事件が起きるたびに、轟川組が絡んでいる事を噂される。正直、うちの組が、何をしていて、何に関わっているのか全く分からない。でも、私にだって、父が世間で言う正しいこばかりをしていない事ぐらいは分かっている。

 今までより、轟川の娘である事が痛く刺さるが、そんな事は初めから分かっていた事だ。自分のやるべきことをやるしかない。


 次の講義まで空き時間が出来てしまい、構内のカフェテラスでレポートの記述を行った。テストもあるし勉強する時間が惜しい。
 時計を見ると、次の講義へ向かう時間になっていた。バッグにレポートと資料を入れて席を立った。


 そのままカフェの扉を開けて、建物の角を曲がった瞬間に、肩が誰かとぶつかった。

 「ごめん」

 その言葉と同時に、ふらつきかけた私の体を引っ張るように、誰かに腕を掴まれた。

 「あっ」
 「あっ」

 叫んだのはぶつかった相手と同時だった。
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