極道に過ぎた、LOVE STORY
 結局、なんだかんだ言いながらも康と一緒にいる事が増えてしまった気がする。そんな中、私は大きな問題を抱えていた。私だけだと思うが、実習先が決まらないのだ。担任が困っているのも良くわかる。多分、情報提供して断られているのだろう。


 「どうした幸? 困った顔して?」

 いつの間にか、康は私の事を幸と呼ぶようになっていた。私も康と呼ぶようになった。

 康に話すべきなのかは悩んだが。

 「実習先が決まらないの。地方ならいいかとも思ったけど、なかなかね」

 「えっ? どうして? 優秀なのに」

 「私に聞く? それとも本当にわかってないの?」

 「ああ。なんで?」

 「名前が悪いんでしょ? すぐに、轟川組だってバレるから」

 「ええ。そんな事で?」

 「そんな事が。世間じゃ大きな事なの。呑気に私の周りにいるのは、あなたくらいのものよ」

 私は、康に流し目をして、そのま机に突っ伏した。


 数日後、自宅で机に向かっていると、カバンの中のスマホが震えた。

 「何?」

 画面に光ったのは、康の名だ。

 「幸、今から出てこられないか?」

 「えっ。今から?」

 康から呼びされたことは、今まで無かった。少し、考える。

 「人手が足りないんだ。住所送るから、すぐに来て」

 「ちょ、ちょっと!」

 電話は切れてしまった。全く、勝手なんだから。



 仕方なく、羽柴に出掛ける事を伝える。

 「お嬢、本当に、こちらへ?」

 「そうよ。何か問題ある?」

 「いえ。ただ、この場所は、轟川の島になります。こんな事を言うのもおかしな話ですが、お嬢が行くような所ではないかと」

 その言葉に、なぜか行ってみなければならない気がした。轟川の島、どんな場所なのだろうか?

 日も沈みかけており、これから遊びに行くのであろう若者やサラーリーマンの姿が多い。煌びやかな店が並び、治安がいいとは言い難い。 

 康に支持されたのは、表通りから裏手に入ったビルだった。若干古いが、このあたりでは落ち着いたビルで、花岸医院と看板が建てられている。

 車から降りると、すぐに康が走ってきた。

 「急いで!」

 「う、うん」

 康の後を追って、ビルの中へと走った。
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