極道に過ぎた、LOVE STORY
 「康、えらくべっぴんさん連れてきたな」

 チラリとこちらに目を向けた白髪混じりの白衣を着た男性が、点滴の針を手をしながら言った。

 「ああ。でも。医大生だから役に立つだろ?」

 「とにかく、出来ることことをやってくれ」

 その白衣姿の男性が向けた目の先には、体調悪そうに椅子に座る人が何人もいた。

 「どうしたの?」

 「この近くの焼肉店で食中毒が出たんだ」

 「康くん、この子ベッドに運んで。点滴の指示が出てるから」

 「はい」

 年配の看護師の声が響いて、康は走って行ってしまった。

 「あなたは?」

 看護師が私の方に目を向けて言った。

 「幸です。医学生で……」

 咄嗟に、名前の方を口にしていた。


 「じゃあ、幸さん、ここに座ってる方達の問診してくれる? その前に手袋とマスク、それからケーシーに着替えて」

 「あっ。はい」

 更衣室で急いで着替えを済ませ、問診票の束を抱え待合室に向かった。

 問診、頭の中ではわかっているけど、実際に患者さんを目の前にする事は始めただ。落ち着け。


 板に問診票を挟み、近くに座る高齢の女性に声をかける。

 「お名前お願いできますか?」

 「清水美代」

 女性は力なく答えた。

 「症状はいつ頃からでてますか?」

 「二時間くらい前から、気持ちが悪くて」

 「吐き気や下痢は?」

 「もう、出るものないわ」

 額に体温計をあてる。

 三十六度8分を確認すると、横に座っていた女の子が、「気持ち悪い」と小さな声を出した。

 えっ!
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