極道に過ぎた、LOVE STORY
 花岸医院長のおかげで大学との話も進み、何とか実習に繋がることが出来た。担任の心からほっとした顔に、いらぬ心労をかけてしまい申し訳ないと思う。


 「本日から実習でお世話になる、轟川幸です。ご迷惑おかけする事も多々あると思いますが、よろしくお願いいたします」

 私は、花岸医院の朝礼で挨拶をした。山田先生は当直だったらしく既に帰宅したらしい。ドククターは医院長と山田先生の他に、外科の杉本先生の三人いらっしゃる。看護師はパートを含め十二人。事務長に、麻酔科医、理学療法士、夜勤のみのバイトの先生などいらっしゃるらしいが、全員が揃うことはまずないとの事。

 バイザーは医院長が自らやって下さる事になった。とにかく、医院長についてまわる緊張と、慌ただしい日常が始まった。

 「ああ! この前の先生だ!」

 「寧々ちゃん、こんにちは、覚えててくれていたの? 体調はどう?」

 「もちろん。もう、気持ち悪くないよ。先生お名前なんていうの?」

 「幸って、いうの」

 「じゃあ、幸先生だね」

 「先日は、お世話になりました。お支払いがまだだったもので」

 寧々の母が、申し訳なさそうに言う。派手な装いだが、挨拶はきちんと出来る人だった。


 「寧々ちゃんの母は、この近くの店のママだよ。寧々ちゃんはこの街で生まれた。ここは子供も多いから、この病院はこの街で生きていくために欠かせない場所だ」

 康が、ひょっこりと顔を覗かせ、寧々と母の後ろ姿に目を向けた。


 「今日、バイトだったの?」

 「うん。幸は、そろそろ終わる時間か? 実習レポート大変だろ?」

 「うん。でも、すごく勉強になる」

 「相変わらず真面目だな」

 その時、病院のドアが激しく開いた。


 「先生! こいつが!」

 腕から血を流した男が、二人の男に抱えられて入ってきた。

 「大丈夫ですか? 山田先生呼んできて!」

 「はい」

 すごい出血だった。大変な事だ
< 28 / 84 >

この作品をシェア

pagetop