極道に奏でたLOVE SONG
 私は、私立の小学校に通っていた。勿論、いつも黒い車が送り迎えをしてくれる。でも、この学校は、ほとんどの子が、送り迎えをしてもらっているので、当別違和感がないと思っていたのはは私だけだったみたいだ。

 「おはよう」

 教室に入ると、ちゃんと皆も挨拶してくれる。

 「みゆきやん、おはよう」

 「おはよう。さっちゃん」

 「みゆきちゃん、今日、公園で遊べる?」

 「ごめんね。今日、ピアノと塾なんだ」

 「えっ? ピアノ始めたの?」

 「うん。ママが習えっていうの。だから、あんまり遊べないかも。でも、学校でいっぱい遊ぼうね」

 「うん。そうだね」

 そう、皆学校では、一緒に遊んでくれるし、おしゃべりもしてくれる。でも、お家に帰ると遊んでくれない。皆、習い事が忙しいからじゃない。

 友達が話しているのを気いいてしまったからだ。


 トイレから戻ると、みゆきちゃんと、なみちゃんが話している最中だった。

 「今度の日曜日、ママがクッキーパーティーしてくれるの。なみちゃんも来てくれる?」

 クッキーパーティー。私も誘ってもらえると、疑いもせずに二人の元に走ろうとした。


 「うん。でも、さっちゃんどうする? さっちゃん行くなら、ママが駄目だって言うと思う」

 「ママも、さっちゃん誘っちゃダメだって。さっちゃんには気付かれないようにって言われてるの」

 「そっかあ。残念だけど仕方ないね。さっちゃんのパパ、ヤクザの組長だもんね」

 私は、教室の入り口で動けなかった。

 そうだよ、ヤクザの組長の娘。それが、ダメな事なの?

 どうしたらいい? 

 その時の判断は、幼い私でもこれらの人生の大きな見極めをしたのだと思う。

 教室の中に、何事もなかったように入る。

 「さっちゃん、次音楽だよ。一緒に行こう」

 「うん」

 私は、いつもと同じ笑顔を二人に向けた
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