極道に過ぎた、LOVE STORY
助け合えるまで
 三ヶ月間の実習を得て、また大学に戻った。

 花岸医院で、実習できた事は大きいが、当然、実習の過程は足りない。大学病院実習は問題なさそうだが、担任も、また困った顔を私に向けている。

 「前回の実習、いい評価だったよ。良い経験ができたようだね。また、次の実習先を決めないとだね」

 「ご迷惑おかけして、申し訳ありません」

 「あなたが、謝る事じゃないですよ。私達は、一人でもお多くの医者を世に送り出したいだけです。これは私達の力不足だ。改めて、世間の理不尽さを感じるよ」

 まさか、担任にそんな事を言ってもらえるなんて思ってなかった。

 「いえ。私の家の問題が悪い事なので、仕方ないと思ってます」

 「何を言ってるんですか? ここは大学だ。そして君は医者になりたい学生だろ? それだけの事です」

 「ありがとうございます」


 頭を下げて教授室を出ると、このまま実習先が決まらなかった、せっかく実習を引き受けてくれた花岸医院にも申し訳ないことをしてしまう。


 はあーっと、大きなため息を吐いた。

 「あなたが、轟川幸!」

 いきなり悲鳴に近い声で呼び捨てにされ立ち止まる。すると、私の頭に向かって、白いバッグが振りかぶってくるのが分かり、咄嗟に身を避けた。バッグを持つ手をガシッとつ噛む。

 「痛い! 話して! このヤクザが!」

 見るからに高そうな服に身を包んだ、綺麗な女性だ。この大学の学生であると思う。何度か、講義で見かけたことがある。いつも、大勢の中心で歩いているので、何となく印象に残っていた。

 「突然何?」

 「何よ、何よ! あんたのせいなんだから!」

 「どういう事?」

 「わあああん」

 その学生は、突然大きな声で泣き出した。


 「泣いてるだけじゃわからない」

 「なんで、わからないの? あんたの組のせいで、たっくんがあーー」

 「さっぱり分からない」

 「うっ…… たっくんが、警察に捕まったのよ。あなたの組に、騙されたのよ。ヤクザなんて……」


 組が何をしているのか、正直わからない。でも、いつまでもわからないで済まされる事ばかりじゃないとは思っている。

 「どう言う事か、詳しく教えて」

 私は、彼女の腕を離した。泣きながらも、彼女は話し始めた。


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