極道に過ぎた、LOVE STORY
 最近、誰かに見られている気がする。


 構内のトイレから出ると、目の前に影がいくつか出来た。比較的、人通りの少ない場所だ。

 「ねえ。俺らと一緒に、ちょっといいところに行かない?」

 なんだこいつら。この大学の学生だろうか? 私の事を知っていて声をかけてきているようには思えないが。
 無視して前に進んだ先を、一人の男が遮った。

 「どきな」

 「はあ? 強よがりやがって、大人しくついて来いよ」

 男の手が、顔に触れようとした瞬間、そいつの腕を掴んで捻り上げた。

 「手こずらせるなよ」

 近づいてきた別の男の腹に蹴りを入れた。掴んでいた男の腕を、床に叩きつけたて、そのまま真っ直ぐに歩いた。

 「こいつ!」

 一斉に男五人がかかってきた。大した事はない。かかってきた男に蹴りを入れ。別の男が振り上げた手が、誰かの手によって遮られた。


 「康!」


 「何の騒ぎだよ?」

 「知らないよ」

 「チキショウ!」

 男達が、勢いよくかかってくるが身をかわして、男を投げつけた。康も軽く身を交わし、男に蹴りを入れた。男達は、あっけなく倒れ込んでしまった。


 「こいつらどうする?」

 康は、息一つ切らさずに言った。

 「ここの学生?」

 「さあな? 多分違うだろ?」

 「私の判断じゃ難しい。羽柴に連絡する」


 逃げようとする男を康の手がすかさず抑えこんだ。男が痛みを抑えながら私を見た。

 「あんた、誰なんだ?」

 「轟川幸」

 「轟川って…… まさか」

 男の顔が一気に青ざめた。
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