極道に過ぎた、LOVE STORY
 「お嬢、お客です」

 「分かった。リビングに通せ」

 「はい」

 トモがサッと動く。


 「うあーすごい庭ねえ、ここに何人くらい住んでいるのかしら? 見て見て、この長い廊下初めて見るわ。なんかドラマに出てくる極道の家って感じよね。一度来て見たかったのよ」

 「お、おい、少し静かにした方がいいんじゃないのか?」

 「あら、大丈夫よ。だて、私達、お嬢の大事な友達よ。ねえ、トモさん」

 「え、ええ」

 玄関の方から聞こえてくる声に、仕方なく廊下に出る。


 「玲香、あんた何しに来たんだ?」

 「えっ? 勉強って言ったじゃない。康や幸に教えてもらいたい事が、いっぱいあるのよ」

 「あんたさぁ、本当に、医者になれるの?」

 「えっ、な、なれるわよ」

 玲香の顔は、明らかに引き攣っていた。


 でも、廊下の影で立つ男達の顔は、いつになく緩んでいる気がする。どこの世界から見ても、玲香は綺麗で可愛らしく見えるのだろう。滅多に友達が来ない上に、こんな美人が来たら、そりゃ皆が落ち着かないのも仕方ないが。


 リビングに入り、ソファーに腰を下ろすと同時にドアがノックされる。

 「お嬢、お客のお飲み物は、何にいたしましょう?」

 「何がいい?」

 「俺、ソフトクリーム」

 「おい、誰か! お客に、ソフトクリームお出ししろ!」

 トモの声が響くと、廊下にいた若い男達のバタバタと走り出す足音が響いた。

 「えっ、冗談ですよ」

 康が、焦って立ち上がった。


 「わあー。すごーい。私は、カフェラテお願いしまーす」

 「おい、お客に、カフェラテお出ししろ!」

 トモの声に、また男達の足音が響いた。

 「あんたら、殺されても知らんよ」

 私は、じとーっと二人を横目で見た。だが、玲香は全然気にする様子はない。


 「ねえ、トモさんも一緒に、お茶飲まない?」

 玲香の、言葉にトモは驚いたように目を開いた。そもそも切れ長の綺麗な顔なのだ、どんな表情をしてもサマになるが。

 「いえ、とんでもございません」

 トモは、頭を下げながら逃げるように出て行ってしまった。


 「あー、行っちゃった。つまんないの。でも、カッコいい人多いよね。こりゃいいわ」

 「あんなって、本当、よくわからない」

 私は、呆れてため息をついた。


 すると、また、ドアがノックされた。

 お茶を持って若い奴が入ってくると思ったが、顔を覗かせたのはここの所、家に戻ることが増えているパパだった。
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